トキワ松学園中学校高等学校は、探究学習を核とした独自の教育プログラムを実施している中高一貫校です。
充実した図書環境を活用した情報リテラシー教育から、企業連携による実践的な学び、そして国際力の育成まで、6年間を通じて生徒の主体的な学びをサポートしています。
今回は同校の西川さんに、他校にはない特色ある取り組みについてお話を伺いました。
美術デザインコースと探究学習を軸としたカリキュラム

ー本校の教育理念やカリキュラムの特徴について教えてください。
西川:本校の大きな特徴として、高校進学時に美術デザインコースという美大を目指すコースを選択できることが挙げられます。
中学と高校の全コースに共通しているのが「探究」をキーワードとした教育です。時間割の中に探究の授業をしっかりと組み込み、体系的な学びを提供しています。
中学から高校まで段階的に行う探究学習プログラム
ー探究学習について、具体的にどのような授業を行っているのでしょうか。
西川:本校は4万2千冊の蔵書を持つ充実した図書室を有しており、毎月100冊程度の新刊が入ってきます。読み物だけでなく、資料も豊富に揃えています。
中学1年生では、図書室を活用した「思考と表現」という科目を行います。この授業では、探究に必要な情報収集スキル、インターネット情報の真偽判断、発表の仕方や文章構成などの基礎を学びます。
中学2年生では、大手製菓メーカーとの連携により、実際の商品開発プロセスを学びます。生徒がグループでチョコレートやアイスクリームの新商品を企画し、CMまで制作する実践的な授業を行っています。
中学3年生では、AI活用をテーマにアプリ開発に挑戦します。現代社会において重要となるAIとの付き合い方や効果的な活用方法を学びながら、実際にアプリを開発する経験を積みます。
高校1年生では、再び「思考と表現」の授業があり、国立国会図書館の検索方法や社説の読み方など、より高度な情報リテラシーを学びます。
「思考と表現」とは別に探究の時間を週2時間設けており、企業探究という授業では様々な大手企業から出されるミッションに取り組みます。多様な解釈が可能なミッションに対し、生徒が企業研究を行い、独自の提案を企業に向けて発表します。
高校2年生では探究の時間を3時間に増やし、自分で設定した課題について本格的な探究活動を行います。これまでに培ったアイディアの創出方法、先行研究の調査方法などのスキルを活用し、生徒それぞれが多様なテーマで研究を進めています。
英語圏を超えた国際力育成への取り組み
ー英語教育やグローバル教育において、独自で行なっている取り組みがあれば教えてください。
西川:本校では「英語力」ではなく「国際力」という言葉を使用しています。これは、英語をコミュニケーションツールとして実際に使える力を育成したいという考えからです。
中学生は通常の英語の授業4時間に加え、リスニング・スピーキングの時間を2時間設けています。この時間では、英語圏以外の外国人ゲストを招いてインタビューを行うなど、英語が世界共通語として機能することを実感できる機会を提供しています。
例えば、ケニア、スペイン、台湾など各国のゲストにインタビューを行い、その内容を英語で発表する「English Day」という行事を行っています。英語圏の人だけでなく、様々な国の人々と英語で繋がることができるという体験を重視しています。
ー生徒が学んだ英語スキルを、海外で実践する機会はありますか。
西川:これまでも希望者制でイギリスやオーストラリアでの研修プログラムを実施してきましたが、今年度から高校2年生の修学旅行先がマレーシアとなりました。
今回の変更により、すべての生徒が実際に英語を使ってマレーシアの方との交流を経験できます。希望者限定ではなく、全員が現地での国際交流を体験できることを私たちも楽しみにしています。
アウトプットを重視した独自の指導方針
ー生徒への指導において特に意識していることや、学校としての方針を教えてください。
西川:本校の指導の根幹は「調べる・見つける・分かち合う」というサイクルです。自分で考え、掘り下げるだけでなく、それを友達と分かち合うことで思考をさらに深めていくことを重視しています。
そのため、本校は発表の機会が非常に多い学校として知られています。
美術デザインコースでも、作品制作だけでなく、コンセプトやターゲット設定、デザイン意図を発表する機会を必ず設けています。デザイナーに必要なプレゼンテーション能力を実践的に身につけることができます。
校内から校外へ広がる生徒の活躍の場
ー今後、より強化していきたい取り組みがあれば教えてください。
西川:探究プログラムの整備と教員のファシリテーションスキル向上が進んできたところで、今後は生徒により多くの学外発表の機会を提供したいと考えています。
現在も高校2年生がサイエンスキャッスルなどの外部発表会に積極的に参加していますが、下級生にもそうした機会を広げていきたいと思います。
「好き」を見つけて伸ばす学習環境
ー最後に、記事をご覧の方へメッセージをお願いします。
西川:本校は外部説明会で「本が好きな子、絵が好きな子、英語が好きな子集まれ」と呼びかけています。もちろん、こうした明確な興味を持つ方には非常に楽しく学べる環境を提供できます。
一方で、「色々やってみたいが何をすればいいかわからない」という方にも本校をお勧めします。トキワ松学園では、6年間の多様な学習体験を通じて、「これが好きで、これをずっと続けていきたい」という方向性を見つけることができる学校だと確信しています。
ぜひ一度見学にいらしてください。