大阪教育大学附属池田中学校は、「自主・自律の精神の育成」を教育目標に掲げ、生徒が自分で考えて判断し、行動できる力を育むことに注力しています。
独自の教育プログラムを通じて生徒の主体性と実践力を養う同校の取り組みについて、副校長の田中さん、教務主任の岸上さん、研究部長の井場さんにお話を伺いました。
「自主・自律の精神」を核とした教育理念

ー教育理念やカリキュラムの特徴について教えてください。
田中:本校は長らく、教育目標として「自主・自律の精神の育成」を掲げており、子どもたちが自分で考えて判断し、行動できる人材を育てることに取り組んでおります。
学習の学び方や様々な取り組みにおいても、主体性を持った協働的な学び、そして探究的な学びを大切にしています。
また学校としては、安全教育と国際理解教育に力を入れており、そのような取り組みも数多く実施しています。
深い学びと実社会への接続を重視した授業設計
ー教育理念に沿った具体的なプログラムや文化活動について教えてください。
井場:大きく3つの柱で取り組んでおります。1つ目が授業で深く学ぶということ、2つ目が行動力をつけるための社会貢献活動、3つ目が主体性と協働性を育むための応援デモンストレーションです。
1つ目の深く学ぶことに関しては、本校では先取り学習は行わず、学年で習うことを突き詰めて学習しています。
単に問題が解ければよいのではなく、学習したことを自分たちで繋ぎ合わせて新たなものを生み出したり、別の教科での学びに活かしたり、社会に繋がるような学びを実践しています。
そのためにグループ活動や話し合い活動、理科では毎時間実験を取り入れながら、実物に触れ人と会話して学習していくことを重視しています。
学習の最後にはパフォーマンス課題があり、社会でどのように活用できるかをプレゼンテーションで表現したり、レポートやポスター、劇などを通じて発揮する機会を設けています。
社会貢献活動で育む実践的な行動力
井場:2つ目の行動力を育むための取り組みとして、主に3年生で社会貢献活動を行っています。この活動では、生徒が自分たちでコミュニティ(小学校、中学校、地域など)の人々の困りごとに着目し、その解決に向けた取り組みを実施します。
生徒たちは自分たちで問題を見つけ出し、それが本当に問題なのかを調査し、自分たちに何ができるかを計画してアクションを起こします。
例えば、保育園で保育士さんの手伝いをしたり、ジェンダーレス制服の導入では、生徒たち自身が企業や学校と交渉して新しい制服を導入したりしています。
このような活動の中で、生徒自身が社会の一員と自覚して主体的に行動する力や、企業と直接連絡を取ってやり取りすることを通じて、訪問時に失礼のないよう行動する力が身についています。
縦割りの応援デモンストレーションで培う協働性
井場:3つ目の協働性を育む応援デモンストレーションは、体育大会での縦割り応援ダンスの取り組みです。
思春期で学年差が大きく感じられる中学生において、3年生が振り付けや構成などをすべて作り上げ、1年生2年生に縦割りで教えていきます。先生たちは見守り、生徒たち自身で練習を進めていく形を取っています。
1年生は入学して半年ほどで知らない先輩と関わりながら、背中を見て憧れを持ち、3年生に向けて主体性や、学年を超えた協働性が育まれていきます。
国際的な視野を広げる多様な交流機会
ーグローバル教育や英語教育において、独自の取り組みについて教えてください。
田中:本校は前身である海外貿易の人材を育成する学校からの流れを汲んでおり、もともとグローバルな視点を意識した学校です。
本校では国際枠を設けて、帰国子女や外国籍の子どもを毎年8名程度受け入れています。こうした生徒たちが一般で入学した生徒と一緒に学ぶことで、海外での生活や考え方に触れる機会となっています。
また、中学2年生を対象とした7月のオーストラリア研修(短期留学)と3月のカナダ研修(短期留学)という2回の海外研修の機会を設けています。
さらに、海外からの訪問や姉妹校との文化交流も年間2〜3回実施しており、一般の公立学校よりも多くの国際交流機会を提供しています。
生徒の自主性を最大限に引き出す指導方針
ー生徒への指導で特に意識していることや、学校としての方針について教えてください。
田中:教育目標が「自主・自律の精神の育成」ですので、できる限り子どもたちが自分で判断して、自分で行動できるような機会を充実させることを心がけています。
生徒たちに接する際も、こちらで答えを教えてしまったり、やり方を決めてしまうのではなく、行事や普段の学校生活、学年の様々な取り組みにおいて、子どもたちだけで進めていけるような形を大切にしています。
実践的な学びを通じて社会で活躍する人材育成を目指す
ー今後、より強化していきたい取り組みについて教えてください。
岸上:来年度の入試から生徒数が減ることもあり、学校でも様々な部分を強化していく必要があります。
教員間で話し合った結果、本校の強みは受験を視野に入れた学習ではなく、将来、本校で学んだことを活かして社会で活躍できる人材を育成することだと確認しました。
詰め込み式の学習ではなく、実際に自分たちで様々なことを経験する中で、そのような力を育んでいくことを特に重点的に取り組んでいきたいと考えております。
新しいことにチャレンジする意欲を持った生徒を歓迎
ー最後に、この記事をご覧になる方に向けたメッセージをお願いします。
田中:令和8年度から募集定員が少し減りますが、その分、条件付きではありますが、原則、併設している附属高校への入学希望者全員が入学可能となり、6年間を見通した教育カリキュラムが立てられます。
様々なことに興味を持ち、自分の良さを活かして学ぶことが楽しいと思えるような学校を目指していますので、そのような環境で頑張って勉強したいと思う方はぜひお越しください。
岸上:本校を第1志望としている生徒さんにぜひ来ていただきたいということで、入試日程も統一日に変更しました。
これまで第2希望、第3希望で受験されていた方の受験人数が減り、より本校を志望している方に来ていただきやすくなると考えています。
井場:何と言っても教育大附属ですので、一番は授業です。授業が楽しい、それを目指しています。
しっかり人と関わりながら協働していく、皆で作り上げていくことを実践していますので、この環境にいれば深く考える訓練ができ、行動力も身についてきます。新しいものにチャレンジしたいという気持ちを持って来ていただけたらと思います。