自己肯定感を育て「ハピネスクリエイター」へ成長〜新渡戸文化高等学校の探究学習への取り組み

新渡戸文化高等学校は、「Happiness Creator(しあわせ創造者)」という最上位目標を掲げ、生徒一人ひとりが社会に出てからもウェルビーイングな生き方を実現できるよう、独自の探究学習プログラムを展開しています。

7年前から始まった学校改革により、従来の教育から大きく舵を切り、生徒の自己肯定感を高め,自律型学習者を育てることに重点を置いた教育について、キャリア・ラーニング デザインチームチーフ(進路学習部長)の石井俊二先生にお話を伺いました。

教育理念と生徒に身につけてほしい力

ー新渡戸文化高等学校の教育理念について教えてください。

石井先生:最上位の教育目標として「Happiness Creator(しあわせ創造者)」を掲げています。

これは「自ら学び続けられる力」を身につける6つの自律型コンピテンシーと「認める心」を身につける4つのハピネスマインドを基盤としており、生徒たちが社会に出てからも、Well-beingな人生を実現し、社会に貢献していく力を育むことを理念としています。

生徒一人ひとりが自分の好きなこと、得意なこと、やりたいことを見つけ、卒業後の人生においても他者との関わりの中で豊かで幸せな生活ができることを目指しています。

高等学校の特徴と探究学習への取り組み

ー御校の特徴について教えてください。

石井先生:本校は7年前から学校改革を開始し、自己肯定感を育てることを目的に、探究学習へと大きくシフトしました。

その学びの基礎となるのが3Cカリキュラム(Core Learning,Cross Curriculum,Challenge Based Learning)です。

その中で、大きな特徴の1つ目として、文部科学省が提唱する「学力の3要素」のうち、2つの要素である「思考力・判断力・表現力」と「主体性・多様性・協働性」を伸ばすために、毎週水曜日を「クロスカリキュラム(探究学習の日)」として設定しています。

2つ目の特徴は、Cross Curriculumの一環として,従来の修学旅行をスタディツアー(少人数制フィールドワーク)として実施していることです。

本校には3つのコース(探究進学,美術,フードデザイン)があり,それぞれでスタディツアーを実施していますが、特に探究進学コースでは、高校1年生と2年生で年2回の計4回の実施を基本としています。

訪問先は日本全国約15か所と海外で、地域の課題や農業、林業,水産業、畜産業、食と暮らし、医療などの現場を実際に体験し、現地の方からお話を伺い学ぶことができます。

生徒の成長を支える仕組み

ー生徒さんの成長をどのように支援されていますか?

石井先生:前述の教育活動を通して、生徒が何をしたいのか、何を目指しているのか、生徒の想いを丁寧に聞き取り、それを見逃さないように引き出すこと、そして、次のステップへの道筋を共に考え、生徒が言語化し自分ごとになるよう1on1(1対1の面談)を高い精度で実施することが、私たちの支援の中核です。

進路指導における個別対応

ー生徒一人一人の進路希望にどのように対応されていますか?

石井先生:前述の支援の延長上にありますが、生徒が目指したい進路や実現したいことを、私たちが全力でサポートし、その可能性を広げ伸ばしていくことを基本としています。

進路が見つからない生徒に対しては、水曜日のクロスカリキュラム(探究学習の日)にゼミ活動やプロジェクト活動を通じて、生徒自ら問題意識と課題を見つけ出す機会を提供しています。

また、スタディツアーやスタディフェスタ(探究学習成果発表会)などから問題意識が芽生えることも多くあります。

進路を迷っている生徒には、1on1を通して,時間をかけて自己分析と自己理解を深めるように対話を続け、適性診断ほかのアセスメントやグループワークを活用することで、新渡戸ポートフォリオや第1志望届に言語化し記述できるよう伴走しています。

新たな取り組み

ー最近の取り組みで変化があったことはありますか?

石井先生:高大連携プログラムや大学・短大・専門学校との接続活動を積極的に推進していますが、本校での学びが進学先の専門的な研究や学びに繋がることで、進路を明確に意識することができています。

さらに,海外大学進学も進路選択肢のひとつとして、世界視点での研究と就職に目を向けるようにしており、進学者や志望者が出てきています。

保護者との連携とモチベーション維持

ー保護者との連携について工夫されていることを教えてください。

石井先生:進路ガイダンスや進路情報など、生徒に伝えた内容は、保護者の方々にも同時共有できるよう進路情報サイトやメールでの発信と保護者説明会の実施を意識しています。

特に、高校3年生の毎週のクロスカリキュラム(おもに進路実現に向けた探究学習)の内容は、生徒と同時に情報共有を行っています。

ー生徒のモチベーション維持のために意識していることはありますか?

石井先生:年間行事、式典、エンゲージ週間、実力テスト、アウトプット型テスト、ワークを多く取り入れた授業、進路イベント等を適切なタイミングでスケジュールを組み、節目を意識させることで、ポジティブでハッピーな学びと生活ができるように未来に目を向けさせる仕組み作りを意識しています。

また、生徒個々には、日々の生活状況を見ながら、体調がよくないときや悩みを抱えているときに声をかけたり、現状と次のステップを挨拶程度に確認したりと日常的な声がけや1on1はとても重要と考えています。

今後の展望

ー今後どのような学校にしていきたいとお考えですか?

石井先生:学校改革をさらに進めることで、本校の教育システムと実践を日本の教育の新しいモデルとして、全国の公教育ほかに広めていくことができれば嬉しく思います。

従来の模試偏差値偏重の教育価値観から個々人が持っている才能を多面的な見方で尊敬し合える教育価値観へ切り替えていくことで、日本の未来を学校教育から変えていきたいです。

入学を検討されている方へのメッセージ

ー入学を検討されている方にメッセージをお願いします。

石井先生:人生の基盤となる生き方の軸を本校で見つけてみませんか?

自分自身を見つめ、理解し、自己成長していく高校3年間は、人生の中でも大きな節目となる時期です。

教科書による学習はもちろんのこと、教室を飛び出し、肌で社会に触れること、本物に出会うこと、人と繋がることは将来の貴重な財産です。

未来の自分に投資する3年間を過ごしませんか?

かけがえのない日々を仲間と過ごした良き思い出と共に、卒業後も成長し続け、しあわせ創造者であり続けて欲しいと願っています。