森村学園初等部は、緑豊かな環境と最新のICT教育が共存する、独自の教育を実践する学校です。創設者の「正直・親切・勤勉」という教えを基盤に、子どもたちの好奇心を大切にしながら、豊かな学びの場を創造しています。
今回は、学園独自の教育方針や取り組みについて、時川先生にお話を伺いました。
森村学園初等部が目指す教育

ー森村学園初等部の教育理念についてお聞かせください。
時川先生:森村学園初等部は、実業家の森村市左衛門によって創設された学校です。宗教的な縛りがないことが特徴の一つで、「正直・親切・勤勉」という森村市左衛門の教えを基本として、日々の教育活動を進めています。
また「よく学び、よく遊べ」という校風も大切にしており、授業も遊びも楽しみながら学んでほしいと考えています。各学年3クラス、1クラス40人で構成されており、男女比はほぼ同数です。これは社会の縮図となることを意識しています。
現在の教育の柱として、言語教育(ランゲージアーツ)、英語教育、ICT教育を掲げています。特にICT教育では、1年生から6年生まで体系的なプログラミング教育を実施しています。
自然との調和を大切にした学校生活
ー他校にはない森村学園初等部ならではの特徴についてお聞かせください。
時川先生:本校の特徴は、豊かな自然環境です。キャンパス内には緑が多くあり、季節によって様々な自然の変化を体験できます。例えば、ユリの木の葉が一斉に落ちる時期には、子どもたちは落ち葉の中に埋もれて遊び、その温かさを体感します。
また、児童は登下校時以外は体操着で過ごし、積極的に外遊びを楽しんでいます。中庭や屋上、校舎に隣接した森にもグラウンドがあり、自然に親しむ環境が整っています。
特に、低学年の児童は遊びを通じて自然と触れ合う機会が多く、時には服が汚れたり破れたりすることもありますが、それも成長の過程として捉えています。
最新技術との融合
ーICT教育について詳しく教えていただけますか。
時川先生:特徴的なのは、デジタルとアナログの融合です。例えば、iPadを持って春の自然を撮影し、教室の電子黒板でプレゼンテーションを行うような活動を行っています。
また、プログラミング教育では、画面上だけでなく、実際にロボットを動かすといった実践的な学習を重視しています。ただし、ICTの活用自体が目的ではなく、必要のない場面では敢えて使用しないという判断も大切にしています。
豊富な体験学習と行事を通じた成長
ー具体的な教育活動やプログラムについて教えてください。
時川先生:自然体験を重視する本校では、年間23泊の宿泊行事を実施しています。3年生から始まるこれらの活動は、自然との触れ合いだけでなく、友人との協調性や自立心を育む重要な機会となっています。
また、音楽会、展覧会、学芸会、運動会という4大行事があり、それぞれの行事で児童が主体的に関わる機会を設けています。これらの行事を通じて、「正直・親切・勤勉」の精神を学ぶことができます。
必ずしも主役として活躍するだけでなく、裏方として貢献することの大切さも学んでいきます。
グローバル教育への取り組み
ーグローバル教育や英語教育について、具体的な取り組みを教えていただけますか。
時川先生:英語教育では、イギリスの公的機関であるブリティッシュ・カウンシルと連携し、独自のアプローチを展開しています。今年度からは、日本人の英語教員とネイティブ講師が協力して授業を行う新しい試みを始めました。
英語の習得度を競うのではなく、英語を楽しみ、もっと学びたいという気持ちを育てることを重視しています。
最近では、ハロウィンの時期に保護者の協力を得て校内でスタンプラリーを実施し、英語でのコミュニケーションを楽しむ機会を設けました。
また、英語の授業では、校内の自然を活用したフィールドワークや、英語圏の伝統的なお菓子作りなど、様々な体験型の学習を行っています。
6年生を対象としたオーストラリアへの語学研修も実施しており、この夏には28名の児童が参加しました。参加者の選考では、英語力ではなく挑戦する意欲を重視しています。また、ICT教育の一環として、国際的な映像コンテストへの参加なども行っています。
今後の展望と保護者へのメッセージ
ー今後、より強化していきたい点や取り組んでいきたい部分があれば教えてください。
時川先生:今後の課題として、全ての児童が楽しめる授業づくりと、教員の研修・教材研究の充実を挙げています。40人クラスでの効果的な指導方法の確立や、自然環境をより活用した授業展開にも力を入れていきたいと考えています。
また、各教科のエキスパート教員の育成と、その知見の共有も重要な課題です。「今日の授業のどこが楽しかったか」を常に問いかけ、教員同士が刺激し合える環境づくりを目指しています。
ー最後に、この記事をご覧の保護者様や子供さんにメッセージをお願いします。
時川先生:学びは「やらされる」のではなく「やりたい」という気持ちから生まれることが大切です。その実現には、時には大人の我慢も必要かもしれません。結果が多少見劣りしても、子どもの主体性を尊重することが重要です。
ご家庭でも、同じことを「やらされる」ではなく「楽しくて自分からやる」という形に変えていくことができます。ぜひ、お子様と一緒に「楽しい」を作り出す仲間になっていただければと思います。そうすることで、楽しい社会、楽しい国、楽しい世界を作っていけるのではないでしょうか。