中学校生活を「通過点」ではなく「出発点」としてとらえる。そんな強い思いを胸に、生徒一人ひとりの可能性を引き出す九州国際大学付属中学校。今回は吉田副校長に、教育理念や独自の取り組み、これからの展望について詳しくお話を伺いました。
「K点突破」が示す教育理念とは?
ー改めてにはなりますが、九州国際大学付属中学校の教育理念について教えていただけますか?
吉田:本校では「K点突破」という言葉を合言葉にしています。これはもともとスキー競技で使われる「K点」という言葉に着想を得たもので、私たちはそれを“自分の中にある限界点”と捉えています。限界とは、実は思い込みにすぎない。だからこそ、生徒たちには「自分の力を信じて、限界を突破してほしい」という願いを込めて、この言葉を掲げています。先生と力を合わせ、限界を超えて自己実限を図っていこうとする姿勢が本校の教育の根幹です。
中高一貫にしない理由と、進路の自由度
ー教育理念を具体的に体現する取り組みには、どのようなものがあるのでしょうか?
吉田:実は、本校は中高一貫校ではありません。付属高校はありますが、中学3年間で一度区切りを設けて、それぞれの進路を見直すシステムにしています。小学校6年生の段階では見えていなかった世界が、中学生活の中で見えてくる。興味・関心や適性が広がってくる3年間を経て、自分にとって本当にふさわしい進路を見つけてほしいという思いがあります。
ー実際、進学実績を見ても多様な進路を選ばれている生徒さんが多いですね。
吉田:おっしゃる通りです。地元の高校に進学する生徒も多いですが、中には寮生活を選んで遠方の学校に進む生徒や、全国的にレベルの高い学校を目指す生徒もいます。もちろん、こちらから特定の高校を薦めることはありません。本人の「行きたい」という気持ちを大事にし、実現できるようサポートしています。
自分の目で世界を知る、体験学習とスクールライフ
ー「K点突破」の精神を体験的に学ぶ機会も多いと伺いました。
吉田:そうですね。本校では「体験学習」を学習指導と並ぶもう一つの柱としています。中学3年間を通じて、「社長さんに聞こう」「市役所訪問」などのインタビュー活動、古都探訪教室、オーストラリアでの海外体験教室など、実際に足を運んで経験を積むことを重視しています。知識として学ぶだけでなく、自分の目で見て、肌で感じることで、自分の将来をより具体的に考えることができるようになるはずです。
英語は「勉強」ではなく「使う力」を育てる
ー貴校の英語教育についても教えてください。
吉田:本校では、コミュニケーションのツール(道具)として英語を学ぶことを重視しています。英語力の習得自体が目的でなく、「聞く・伝える」というコミュニケーションの出発点として英語を使える力を高めていくことを目指しています。
中 3 では英語でプレゼンテーションする機会を設けていますが、英語を話すことだけを目的とはしたものではありません。プレゼンテーションする内容の背景や知識を身につけたり、聞き手に伝わりやすい論理的な表現方法も学んだりしながら伝えたい内容を充実させ、それを英語で上手に伝えるという学習に取り組んでいます。

探究力を育てる「シリーズ授業」とは?
ー他校にはない独自の取り組み「シリーズ授業」についても伺えますか?
吉田:シリーズ授業とは、学術の領域を超え、教科を横断して、リレー形式で進めて行く探究型の学習です。現在は「エネルギー」をテーマに、中学2年生で年間を通じて学習しています。現代社会が抱える問題やエネルギーについての知識を得て、様々な情報をもとに多面的・多角的に考え、自分の意見を論理的・効果的に伝えることで、将来、社会で生かせる力を育てています。
先生も、教科の枠を超えて話し合い、磨きあい、協力しながら作り上げる、まさに、生徒も先生も“学ぶ”取組みになっています。

保護者と未来の生徒たちへのメッセージ
ー最後に、保護者の方やこれから受験を考えるお子さんに向けてメッセージをお願いします。
吉田:中学受験はゴールではなくスタートです。本校では、中学3年間を通じて「今の自分を超えていこう」とする姿勢を育みます。すぐに成果が出るわけではありません。でも、日々の学びや体験の積み重ねが、やがて「自分の未来を切り拓く力」になります。ぜひ一緒に「K点突破」を目指して、チャレンジを楽しんでほしいと思います。