成城学園初等学校が実践する「個性尊重の教育」と「温かい人」を育む6年間の学び

創立以来受け継がれる4つの教育理念を軸に、一人ひとりの個性を大切にした教育を実践する成城学園初等学校。

「温かい人になってほしい」という想いを込めて、子どもたちが互いを尊重し合いながら成長できる環境づくりに取り組んでいます。

プロジェクト型の英語教育や独自の数学教育など、従来の枠にとらわれない学習プログラムを通じて、知的好奇心と豊かな人間性を育むカリキュラムについて、髙橋丈夫校長にお話を伺いました。

成城学園初等学校の教育理念について

ー御校の教育理念について教えていただけますでしょうか?

髙橋校長:本校には4つの教育理念があり、1つ目が個性尊重の教育、2つ目が自然と親しむ教育、3つ目が心情の教育、4つ目が科学的研究を基とする教育です。

個性尊重の教育に関しては、例えば学びが十分でない子どもに関してはその分を補い、学びが進んでいる子どもに対しては同じことを重複するわけではなく、その分上積みをして能率の高い教育を実践しています。

画一的な教育をするわけではなく、授業そのものを工夫し、教科によってはクラスを分割した半数授業という形を取っています。

例えば、同じ時間にクラスを半分に分け、クラスの半分が国語、もう半分が算数をしていたら、次の時間はその逆になる形で、小人数で授業をしております。

また、各教科で教科研究を精力的に進めており、研究授業を外部の先生方に観ていただき、ご意見をいただく取り組みも行っています。

心身を鍛える自然体験と豊かな感性を育む活動

ー教育理念に沿った活動やプログラム、文化活動などがありましたら教えていただけますか?

髙橋校長:自然と親しむ教育については、創設者である澤柳先生は我々の祖先が未開の地を切り開いてきた時のような折れない心を子どもたちが育むことが大切だとおっしゃっています。

普段の体育の授業もそうですが、宿泊学習では海の学習で1時間のライフジャケット遠泳を実施しています。

30分間はライフジャケットを着けた状況で2人でバディを組みながら泳ぎ、30分経過すると片方がライフジャケットを外して、もう1人がライフジャケットをつけたまま30分泳ぐ場合もあります。

子どもたちの状況によっては両方ともライフジャケットを取って残り15分泳ぐなど、そこでも弱音を吐かずに頑張り切るといったことや、6年生になると乗鞍高原に伺い、3000メートルの登山にもチャレンジします。

冬にはスキー学校があり、上手な子もいますが、苦手な子たちは雪山の中で上手くいかない体験をしつつも、仲間とコーチと一緒に学ぶことで技術を身につけ、上達する喜びを味わっています。

心情の教育については、澤柳先生は外面の美しさと内面の豊かさの調和の取れた、文質彬々たる人を育てたいとおっしゃっています。

子どもたちは年に2回ある音楽の会の中で切磋琢磨しつつ互いに尊重し合い、楽器のオーディションを突破しています。

楽器の数が限られているため本来であれば自分のなりたい楽器になるために人を蹴落とすというような発想になるのですが、子どもたちはそうではなく、お互いに教え合って技術を高め合い、自分がなれなくても友達を応援するというような心が育っています。

また、3年生以上は年に1回劇を上演しています。

劇では主役にこだわる子が多いかと思いますが、劇の中で自分が何ができるのか、劇という1つの作品を作り上げるにあたってどういった形で関わっていくのか、そのような活動を通して内面の豊かさを身につけています。

特色あるグローバル教育と英語学習への取り組み

ーグローバル教育や英語教育について取り組んでいらっしゃる内容について伺えますか?

髙橋校長:英語の授業は、1、2年生は1時間の半分20分を2回、3、4年生は45分2回、5、6年生は週3回あります。

指導体制は日本人の教員と外国人の教員とのTTで、日本人の教員も全員英語の能力が高い教員が専科として関わっています。

特徴的なのは、授業の形態がプログラム型学習を取り入れたプロジェクト型学習にしていることです。

プログラム型学習というのは文科省等で決められている内容を教えていく形で、プロジェクト型学習は文科省等で示されている内容が結果的には身に付くのですが、子どもたち自身で問題解決をしていく形の学習です。

例えば2年生が1年生に英語の本の読み聞かせをするのですが、まず自分達で英語の絵本をつくる。その英語の本をつくっていく過程で必要な単語や、読み聞かせをするためのきれいな発音を練習していきます。

教えられているからやるのではなく自分事として学べるよう、プロジェクトという形で授業を進めています。

6年生になると最後卒業制作として、自分の将来についてプレゼンをします。

そのために職業を調べ、自分が伝えたい人にうまく伝わるように、これまでに学んだ英語を活用していく取り組みです。

最近は台湾の学校と交流があり、台湾の生徒がホームステイでこちらにいらっしゃったり、Zoomで学校と繋がるといった活動もあります。

また、5、6年生のうち20人ほどが毎年9泊10日、オーストラリアでホームステイという形でお世話になっています。

そのほか、Let’s have a chat.というイベントを実施しており、保護者の方で英語に堪能な方たちを募り、授業中に英語を使ってゲームをする取り組みもあります。

本校では遊びながら自然に英会話ができるような、より日常の外国での生活に近い形の活動を行っています。

独自の数学教育への取り組み方や背景

ー御校の教科について、数学を取り入れてらっしゃるのはどういった理由があるのでしょうか?

髙橋校長:内容的には比例的推論というものにこだわっている部分があります。

算数は計算中心の教えてもらったものを再生するようなイメージかと思うのですが、本校の授業は問題解決型や、子どもたちが自分で論理的に考えたことを説明する力を身につける点が異なると思います。

中学校の数学ですと証明など抽象度が上がったり、論理的に説明することが求められます。

その前段階として、形式に沿った証明ではなく自分の言葉で自分の考えを友達に分かるように説明するといったところに力を置いているという形です。

昨年、文部科学省の「理数好きな子を育てる探究推進プラン」の奨励研究校として活動し、友達がつまずいている点を皆で共有し、正解にいくにはどうしたらよいかということを皆で考えながら進める授業をさせていただきました。

子どもたちは知的好奇心を発揮し、意欲的に活動していました。

6年間で身につけてほしい力と指導方針

ー生徒の皆さんに6年間で学習面以外でどのような力を身につけてほしいとお考えですか?

髙橋校長:温かい人になってほしいと思っています。

今の流行りの言葉で申しますと利他性です。

自分がよければ良いわけではなく、周りの人のことを考えると、結果的にはそれが自分に返ってくるものです。

そういった皆で幸せになることを考えて、かつ行動できるような、そんな子どもたちになってくれればと思います。

自分の個性だけではなく、周りの人の個性も尊重して皆で生きていける、そんな力、そんな人間性が身に付いたらよいと思っています。

今後の展望と教育活動の発展について

ー今後強化されたいことや新たに取り組んでみたいとお考えのことがありましたら教えていただけますか?

髙橋校長:現状はまだまだだと思っておりますので、新しいことというよりは更なる充実をと思っています。

小さなことですが、毎日「おはよう」と名前を呼んで挨拶すること。

学校全体はかなり温かい雰囲気にはなってきていますが、もっとよい所に手が届くというか、皆がそういった気遣いができると学校全体が温かくなると思っています。

科学的研究を基とする教育では、常に新しいことをやり続けていますので、毎年教育内容が変わっており、更新を続けています。

数学だけで年間6回ほど研究会を実施しており、そこには文科省の先生もいらっしゃいます。

そういう意味では成城の教育自体が外に開いてフィードバックをいただき、またそれを更新して更に子どもたちに返していっている。

同じ授業は毎年あまりなく、コンテンツは一緒でもアプローチが異なったり、常に教育をブラッシュアップしていると感じています。

受験をご検討の方々へのメッセージ

ー最後に記事をご覧の保護者の方やお子さんたちにメッセージをお願いできますでしょうか?

髙橋校長:是非一度初等学校に来ていただいて見ていただき、学校の雰囲気や先生方の雰囲気、お子さんの雰囲気を感じていただいて、もし合うようでしたら是非一緒にお子さんを育んでいきたいと思います。

よろしくお願いいたします。