農業と福祉を結びつける農福連携の取り組みで、障がい者の就労支援と地域農業の活性化を同時に実現する「就労支援B型なっぷ袖ケ浦事業所」。
利用者一人ひとりの個性や経験を活かしながら、地域に根差した支援を展開する同事業所の取り組みについて、代表の稲村さんにお話を伺いました。
農業と福祉を結びつける独自の支援モデル
ーまず、御社のサービス内容について教えてください。
稲村:私たちが提供しているサービスは就労継続支援B型で、一般就労を目指す障がいのある方々への支援を行っています。
障がいの種別は問わず、精神的・身体的な理由で週5日の勤務が難しい方や、週1日や半日だけの勤務を希望する方など、個々の状況に応じて柔軟に対応しています。
特徴的なのは「農福連携」を掲げていることです。近隣の農家さんと連携し、繁忙期に利用者の方々が作業のお手伝いに行きます。その対価として報酬をいただき、それを利用者の方々の工賃として還元しています。
建築からアグリビジネスへ:起業までの道のり
ー事業を始められた背景やきっかけについて教えてください。
稲村:元々は建築系の大学院で学んでいたのですが、建築と農業には深い関係性があると考えていました。自分の建築を作るためには、まず農家になる必要があると考えたんです。
本家が農家を営んでおり、小さい頃から手伝いに行っていた経験もあったので、農業に入るハードルは比較的低かったですね。
農業を始めてみると、人手不足という課題に直面しました。その時に農福連携の取り組みを知り、実際に就労支援B型事業所を見学させていただきました。
そこで障がい者支援の世界に興味を持ち、まずはグループホームに就職して現場を学びながら、2024年4月になっぷ袖ケ浦事業所を開設するに至りました。
高工賃と多様な作業内容を実現する独自のビジネスモデル
ー御社の強みやアピールポイントについて教えてください。
稲村:最大の強みは、利用者の方々に支払う工賃が他の事業所と比べて5倍程度高いことです。一般的な農業型の就労支援事業所は、自前の畑で作物を育て、その売り上げから工賃を支払います。しかし、収穫まで時間がかかるため、工賃の支払いが難しくなります。
一方、私たちは農家さんへの労働力提供というスタイルを取っているため、毎月安定した収入を得ることができます。また、複数の農家さんと連携しているので、ブルーベリー、トマトなど季節に応じて様々な作業を体験できることも特徴です。
大規模な設備を持つ専門農家での作業は、利用者の方々にとっても貴重な経験となっています。
地域との繋がりを大切にした支援
ー利用者の方との接し方で意識していることはありますか。
稲村:外部との関わりを非常に大切にしています。挨拶の徹底や、作業場所を来た時よりも綺麗にして帰るなど、当たり前のことを当たり前にできることを心がけています。
これは障がい者に対するマイナスイメージを払拭し、「一生懸命働いてくれる」という評価をいただくために重要だと考えています。閉じられた環境ではなく、地域社会との関わりを持つことで、利用者の方々の社会性も自然と身についていきます。
地域貢献への新たな挑戦
ー今後の展望についてお聞かせください。
稲村:今後は地域の事業承継にも取り組んでいきたいと考えています。利用者の方々が住む地域のお店や飲食店が失われていくのは、非常に残念なことです。
現在は間接的に農家さんのお手伝いという形で地域貢献していますが、より直接的に地域活性化に関われるよう、後継者不足に悩む事業者さんの事業承継も視野に入れています。
ー最後に、この記事を読まれる方へメッセージをお願いします。
稲村:まず、障がいのある方々の就労の場があることをもっと多くの方に知っていただきたいと思います。私たちは農業だけでなく、一人ひとりの経験やスキルを活かせる場を提供できます。
これまでの経験を活かしきれていない方も、ぜひ一度ご相談ください。新しい可能性を一緒に見つけることができると思います。