【インタビュー】文舞両道を掲げるダンススクール『SPARK(エスパーク)』 ~勉強もダンスも両立できる新しい形の習い事~

「ダンスと勉強、どちらも諦めたくない」 — そんな思いから生まれたダンススクール『SPARK(エスパーク)』。代表の田中彩恵氏は自身の経験から、習い事と学業の両立の難しさを痛感していました。その解決策として誕生したのが、ダンススペースと学習スペースを併設した新しいスタイルの社交ダンス教室です。

高齢化が進む社交ダンス業界の中で、特に若年層に注力する姿勢や、学習サポートも提供するという独自のアプローチは、従来の概念を覆すものです。田中氏が掲げる「文舞両道(ぶんぶりょうどう)」のモットーの下、4歳から90歳を超える幅広い世代が集う空間では、ダンスの技術だけでなく、学びや成長を総合的にサポートする取り組みが行われています。

業界の常識にとらわれない新たな挑戦と、社交ダンスの魅力を若い世代に広げようとする取り組みについて、田中氏に詳しくお話を伺いました。

田中 彩恵(たなか さえ)
SPARK代表取締役。東京都出身、慶應義塾大学卒業。6歳の頃から社交ダンスを始める。2013年に邵帥とターンプロし、イタリアをトレーニング地として選手活動、2021年に統一全日本ファイナリストとなる。2022年3月にユニバーサルグランプリ選手権優勝そして引退。

4歳から92歳まで共に踊る多世代交流の場

ー田中さま、本日はどうぞよろしくお願いいたします。まず簡単にどういった方を対象にしているダンススクールなのか、そしてどのような指導をされているのか、『SPARK』の概要について教えていただけますか?

田中 彩恵代表(以下、敬称略):『SPARK』は未就学児の4歳から高校生くらいまでの若年層、学生層をコアターゲットとしている社交ダンスのスクールです。

実際には、老若男女問わず幅広い年齢層の方々に通っていただいており、最年少は4歳、最年長は92歳と、あらゆる世代に対応した教室になっています。

現在のボリュームゾーンは60歳以降のシニア層の方々がやはり多いですね。私自身、この教室をオープンしてまだ1年ですが、その前に個人事業主として10年ほどダンス講師業を行っていました。その時からメインのお客様は60歳以上の方がほとんどでした。実は社交ダンス業界全体でも生徒さんの8割以上が60歳以上なんです。

業界として高齢化が進み、新しい人が入ってこないという課題があるため、若年層に特に注力した教室をオープンすることにしました。現在は若年層をターゲットにしていますが、もちろん60歳以上の方も男女問わず大歓迎です。

元競技ダンサーが描いた「文舞両道」の夢

ー田中さまが『SPARK』を開かれた経緯やきっかけを是非教えてください。

田中:弊スクールのモットーは「文舞両道」です。ここでの ‟ぶ” は「舞う」という字を使い、「文」は通常の「文学(勉学)」の「文」を使っています。

私自身、幼少期から社交ダンスをやってきましたが、ダンスと学校の勉強との両立が大変でした。大人になってからも社会人生活とダンスを天秤にかけるような場面がたくさんあったんです。そのような経験から、「勉強や仕事をしながら習い事ができる環境があったらいいな」という構想がずっと頭の中にありました。

私は10年間現役の社交ダンス選手として活動していましたが、引退を機に自分の教室を持とうと決意し、長年温めてきた「文舞両道」の構想を実現することにしました。具体的には、ダンス教室の中に「スタディルーム」というコ・ワーキングスペースのようなものを設け、子どもたちが勉強した後にレッスンを受けたり、社会人の方が仕事を終えてからダンスのレッスンに参加できるような空間を作りました。

漫画とメディアが広げる若者の社交ダンス熱

ー若年層の方にはヒップホップ等の激しいダンスなどが人気なイメージがありますが、社交ダンスの若い世代への浸透はいかがでしょうか?

田中:確かに他の習い事と比べると、若年層の生徒さんは少ないのが現状です。バレエやヒップホップと比較すると、社交ダンスを習う若い方は正直少ないですね。ですが、『SPARK』は首都圏では子どもの生徒数がかなり多い教室として評価いただいています。

最近では、漫画『ジャンプ』で社交ダンスを扱う作品が登場したり、テレビでキンタローさんが社交ダンスを披露したりするなど、メディアでの露出も増えてきました。そういったきっかけや、ご家族がすでにダンスをやっているというパターンも多く、徐々に若い世代も増えてきています。

また、子どもだけのための競技会も以前より多く開催されるようになり、社交ダンスを取り巻く環境も少しずつ変わってきていると感じています。

ダンスフロアに学習スペース? 常識を覆す空間づくり

ー他のダンス教室にはない、『SPARK』ならではの特徴的なアピールポイントをぜひ教えてください。

田中:先ほども触れましたが、「スタディルーム」というスペースをダンススペースとは別に完備しているのが最大の特徴です。小さなスペースではありますが、ここで子どもたちが宿題をした後にダンスのレッスンに参加したり、社会人の方が仕事をしてからレッスンに移行したりと、多様な活用ができます。

また、不定期ではありますが、このスタディスペースを利用して英語レッスンや図工のレッスンなど、社交ダンス以外のカルチャーレッスンも開催しています。社交ダンスだけではなく、総合的な学びの場を提供しているところが弊スクールの大きな特徴です。

このような取り組みをしている理由は、先ほども少し触れましたが私自身の経験に基づいています。私は幼い頃から競技ダンスをやっていましたが、進学校に通っていたこともあり、勉強との両立がとても難しかったんです。「どちらかを諦めなければならないのか」という葛藤が常にありました。

特に学生時代は、学業との両立が最大の壁となり、そこで習い事を諦めてしまう子が多いんです。社交ダンスに限らず、習い事全般にこの壁があるので、それを取り払い、効率的に両方を続けられる環境を作りたいと思いました。

『SPARK』を開く前に子どもたちを教えていた際も、机がないので仕方なく床で宿題をしている姿を見て、「ちゃんとした学習スペースがあればいいのに」と感じていたことも、この取り組みのきっかけになっています。

「無理せず長く続ける」生徒第一の指導哲学

ー生徒さんたちに指導する際に、特に意識していることや方針などがあれば、ぜひ教えてください。

田中:生徒さんによって目的はさまざまです。健康維持のために通われる方もいれば、競技で勝つことを目指している方もいます。全員に共通して心がけているのは、「長く続けるために体を壊さないこと」と「ライフバランスを崩さないこと」です。

例えば、学生であればテスト前はダンスを無理にする必要はないですし、体調が優れない時に「キャンセルするのは申し訳ない」という気持ちで無理して来ないでほしいと思っています。自分のライフスタイルを犠牲にしないよう、生徒さん一人ひとりの状況に合わせた指導を心がけています。

可能な限り生徒さんの生活リズムも把握し、無理なく継続できて、自然とライフスタイルの一部になるような教室づくりを目指しています。

「ダンスは言葉を超える世界共通言語」

ー田中さまは幼少の頃から社交ダンスをされてきましたが、長く続けてきて得られたものにはどのようなことがありますか?

田中:ダンスを通じて得られた最も大きなものは、「言語ではない言語」を身につけられたことだと思います。社交ダンスはペアで踊るものなので、それ自体がコミュニケーションになるんです。

私は留学経験もありますが、最初は現地の言葉がほとんど話せませんでした。しかし、ダンスパーティーに参加することで多くの友人ができました。言葉が通じなくても、ダンスを通じて交流できるんです。これは海外旅行や異なる世代の方々との交流でも同じことが言えます。

「ダンスは世界共通の言語だ」と実感できたことが、私にとって最も価値のある経験でしたね。

プライベートからグループまで、多彩なレッスン展開

ー提供されているコースやプランについて、簡単に教えていただけますか?

田中:弊スクールでは、大きく分けてダンスコース」と「スタディコース」をご用意しています。

ダンスコースには、プライベートレッスン(マンツーマンレッスン)とグループレッスンがあります。プライベートレッスンでは、現在12人在籍している講師の中からニーズに合った先生を選んでいただき、25分間のマンツーマン指導を行います。グループレッスンは4人から最大10人程度で、50分間のレッスンを行います。

スタディコースでは、ダンスレッスンの前後に大学生アルバイトによるマンツーマン指導を受けられます。家庭教師のような形式で、1時間1,500円~でご利用いただけます。

さらに、不定期で英語レッスンや図工レッスンなども外部の専門講師をお招きして開催しています。これらは会員でなくても、スポットでご参加いただけます。

また、様々なイベントも定期的に企画しています。ダンスと学習、両方の面から生徒さんの成長をサポートする環境を整えています。

社交ダンスで脳を活性化?進行中の知育効果研究

ー今後、強化していきたい点や、あらたに取り組んでいきたいことがあれば教えてください。

田中:スクールをオープンしてまだ1年ですが、あらたな取り組みとして「社交ダンスの知育効果」について実証実験を行っています。社交ダンスと子どもの教育をより専門的に結びつけていきたいと考えています。

社交ダンスには後ろ歩きなどの動きが多く含まれているため脳の発達に良い影響があります。また、ペアダンスであることから社会性も自然と身につきます。これらの効果を科学的なデータとしてきちんと整理し、地域の教育活動として広げていきたいと思っています。

子どもたちの成長に社交ダンスがどのように貢献できるのか、その可能性をさらに追求していきたいですね。

中国で国策化する社交ダンス、世界の潮流を読む

ー海外諸国の社交ダンス人口は、どのような状況なのでしょうか?

田中:実は海外でも社交ダンス人口は減少傾向にありますが、現在最も盛んなのは中国です。もともとは欧州発祥のダンスだったため、以前はヨーロッパで盛んでしたが、最近はアジア、特に中国や東南アジアでの人気が高まっています。

中国では国の教育機関が社交ダンスを推進しており、これにより急速に普及しています。具体的には、社交ダンスや武道などを習うことが課外活動として評価され、受験や就職の際に有利になるシステムがあるんです。親の意向でスタートする場合も多いですが、国の政策として取り入れられることで広く普及しています。

また、過去には社交ダンスを題材にしたテレビ番組や映画、オリンピック種目入りの可能性もあったときには日本でも盛り上がりました。このように国際的な認知や公的な支援があると、社交ダンスの普及に大きく貢献します。

社交ダンスは社交性やマナー、身体能力の向上など、教育的価値が高いものです。こうした側面を日本でももっと広く知ってもらえるよう取り組んでいきたいですね。

「敷居は低く、可能性は無限に」入会検討者へのメッセージ

ー最後に、『SPARK』に入会を考えている方々にメッセージをお願いします!

田中:「社交ダンスって難しそう」「年齢的に今さら始められるかな」そんな不安を抱えている方も多いかもしれません。でも安心してください。『SPARK』では現在、4歳のお子さんから90代のシニアの方まで、皆さん楽しく踊っています。特別な衣装も必要なく、最初は普段着と運動靴で十分です。

『SPARK』の魅力は、ダンスだけにとどまりません。「今日は勉強を終えてからダンスを楽しみたい」「仕事の合間にダンスで気分転換したい」など、あなたのライフスタイルに合わせた通い方ができます。スタディルームでは英語や図工など多彩なレッスンも開催しているので、「ダンスは少し不安だけど、英会話なら…」という方も大歓迎です。

まずは気軽に、不定期開催のスポットイベントに参加してみてください。一歩踏み出す勇気が、新しい世界への扉を開きます。『SPARK』で、ダンスの楽しさと学びの喜びを一緒に体験しましょう。皆さんとお会いできることを心から楽しみにしています!