「指は第三の脳」—『そろばん塾ピコ(アンビシャス)』卜部範之氏が語る21世紀型能力開発の秘訣

京都大学の学生たちの知見をもとに誕生した ‟そろばん塾ピコ” は、単なる計算技術ではなく「受験に役立つ能力開発」を目指す革新的なそろばん教室です。伝統的なそろばん教育の良さを残しながらも、現代の家庭のニーズに合わせたWeb予約システムや個別指導方式を取り入れ、忙しい保護者と多様な個性を持つ子どもたちに寄り添ったサービスを展開しています。本記事では、『そろばん塾ピコ(アンビシャス)』を関西地方北摂地域で10教室運営する卜部範之氏に、その教育理念から新たな展開まで詳しくお話を伺いました。

「受験に強くなる」をコンセプトにした新時代のそろばん教育

ー卜部様、本日はどうぞよろしくお願いいたします!まず簡単に、どういった方を対象にしているそろばん塾なのか、そしてどういった指導を行っているのか、『そろばん塾ピコ(アンビシャス)』の概要について伺えますか?

卜部範之代表(以下、敬称略):基本的にそろばん教室というのは、戦前・戦後を含めて、いわゆる寺子屋方式で近所のお子さんを集めて家内工業的にやっていたのが従来のスタイルでした。‟そろばん塾ピコ”の場合は事業化ということで、そういう家内工業ではなく、いわゆるチェーン化として全国に展開しています。対象は、基本的には小学生です。

指導内容については、従来のそろばん塾はそろばん技術そのものを目的としていましたが、そろばん塾ピコの場合は「京大個別会」という京大生が指導する進学塾のノウハウと、そろばんで日本一になった生徒がテキストコンテンツを作り上げてスタートしています。

従来の暗記型学習よりも、直感的な頭脳開発・能力開発ができるという考えから、「そろばんを習うためのそろばん」ではなく、「受験に役立つ暗算能力を身につける」ことを目的としています。なので、全国大会で段位を目指すのではなく、日本商工会議所の検定2級か1級程度の取得を目標にしています。これで受験に必要な能力は十分身につくと考えているのです。

「人生を生き抜く力」を育む教育哲学

ー卜部様がそろばん教育を通じて育みたい能力とは具体的にどのようなものでしょうか?また、単なるそろばん技術の習得ではなく教育哲学としての位置づけについてお聞かせください。

卜部:私たちが目指しているのは、子どもたちに「人生を生き抜く力」を身につけてもらうことです。その土台となるのが知能であり、この知能を効果的に開発するのがそろばんなのです。

そろばんで培った基礎的な知能の上に、学校や学習塾で知識を積み重ね、そして実際の経験を通じて本当の生きる力が形成されていきます。つまり、そろばんはあくまで手段であって目的ではないのです。

この点が他のそろばん教室と大きく異なります。私たちは単なるそろばん技術の習得ではなく、人生の土台となる知能教育の一環としてそろばん学習を位置づけています。子どもたちの将来、そして日本の未来のために、この基礎教育の部分でお役に立ちたいと考えています。

業界に新風を吹き込んだそろばん塾ピコの誕生秘話

ー創業者の方が ‟そろばん塾ピコ”を設立された経緯やきっかけについて、わかる範囲で教えていただけますか?

卜部:創業者である「京大個別会」の代表者・孝橋 一(たかはし はじめ)氏は、京都で京大生を集めてWeb上での学習指導ビジネスを展開していました。その過程で、個別指導講師として採用した京大生たち120名小学生時代の習い事を調査したところ、5割がそろばん、7割がピアノを習っていたという結果が出たのです。つまり、指を使った活動が脳の活性化に非常に効果的だということがわかったのです。これは非常に重要な発見でした。「受験に役立つコンテンツだ」と確信し、新たなそろばん教室をスタートさせたのが始まりです。

直営教室でそろばん教室運営のノウハウを構築後、フランチャイズ方式ではなく、会員組織として全国で志をおなじくする同志とともに全国で約700教室を組織されております。

創業者の孝橋はこうした古い制度に縛られることなく、自由な発想でそろばん教育を提供したいと考え、2007年に ‟そろばん塾ピコ”をゼロから立ち上げました。

デジタル時代に対応した利便性と個別指導の両立

ー他のそろばん塾にはない 、‟そろばん塾ピコ”ならでのアピールポイントを教えてください。

卜部:最大の特徴は、現代の忙しい家庭のニーズに合わせたシステム化にあります。従来のそろばん教室はオーナーの自宅で近所の子を教えるというアナログな形態が主流でした。良い面もありますが、現代の生活様式には合わない部分も多かったのです。

現在の保護者、特にママたちの8〜9割は仕事を持っています。急な病気や学校行事で予定が変わることも珍しくありません。そこで弊そろばん塾(アンビシャス)は、そろばん教室としては業界でも早い段階で、Webを活用した予約・振替システムを導入しました。スマートフォンで簡単に予約変更やキャンセルができるため、電話で連絡する手間がなく、大変便利だと喜ばれています。

もうひとつの特徴が「少人数個別指導」です。従来のそろばん教室では10〜20人に対して一斉指導を行うため、同じレベルの子が集まる決まったクラスに通う必要がありました。私たちの教室では「無学年制」を採用し、先生が巡回しながら個別に指導するため、レベルや年齢の異なる子どもたちが同時に学べます。兄弟姉妹が一緒に通えるという点も、保護者にとって大きなメリットになっています。

一人ひとりに寄り添う「長期視点の個別指導」

ー生徒さんに指導する際に特に意識していることや工夫している点などがあれば、ぜひお伺いさせてください。

卜部:私は元々学習塾経営からスタートして、後にそろばん教室に移行しました。当初は効率を考えてマニュアル化された画一的な指導方法を目指していたのですが、すぐに現実とのギャップに気づきました。

子どもたちはそれぞれ年齢も違えば、習熟度も性格も異なります。「1日に何ページの宿題をこなす」といった固定的な指導法では、子どものやる気が低下し「そろばん教室に行くのは嫌だ」という気持ちになってしまいます。途中で挫折してしまっては、誰にとっても良いことはありません。

私たちが大切にしているのは、「細く長く」継続して4〜5年間学び、日商の3級・2級・1級を取得するという長期的な視点です。そのためには、その日の子どもの体調や気分にも配慮する必要があります。「今日は宿題が嫌だな」という表情を見せる日もあるでしょう。そんな時は「今日は塾内検定を取ったばかりだから、ご褒美に宿題はパスしよう」といった柔軟な対応をします。

3〜4年先の資格取得という大きな目標に向けて、今日はどういう指導が適切かを常に考える。この「生徒目線に立った寄り添う指導」を特に意識しています。これは先生方からの提案でもあり、より丁寧な指導を心がけるようになりました。

個々の目標に合わせた柔軟なコース設計

ー提供されているコースやプランについて、簡単にご説明していただけますか?

卜部:基本的には週の回数によって、3つのコースを用意しています。

週1回(月4回)の「基本コース」、週2回(月8回)の「標準コース」、そして週3回(月12回)の「特進コース」です。

理想的には週2回の標準コースをおすすめしていますが、実際には6割ほどの生徒が週1回の基本コースを選択しています。一方で、特に意識の高い保護者、自身がそろばん経験者でその価値を十分理解されている方は週3回の特進コースを選び、通常5年かかる資格取得を3年で達成するケースもあります。

これらの基本コースに加えて、オプションで「プラチナ暗算」と名付けたコースも提供しています。一般的には「フラッシュ暗算」と呼ばれるもので、デジタル画面に次々と表示される数字を足し算していく能力を養います。

指先を活かした新たな教育事業への挑戦

ー今後、こういった点をより強化していきたい、そしてあらたに取り組んでいきたいということがあれば、ぜひお伺いさせてください。

卜部:『そろばん塾ピコ(アンビシャス)』はドミナント戦略で、車で30分以内の地域に教室を展開しています。今後も無理に拡大するのではなく、目が行き届く範囲での地域密着型の運営を続けていく予定です。

その一方で、少子化という現実も見据え、新たな取り組みをスタートさせました。それが「タイピングの英語教室」です。そろばんと同様に「指を使う」という共通点があり、非常に親和性が高いと考えています。2025年2月には3教室目をオープンしました。

そろばん教室に併設することで、お子さんの利便性も高まりますし、同じ「指を使う学び」という点で自然な展開だと感じています。派手な宣伝はしていませんが、子どもたちに喜んでもらいながら着実に成長しています。

「指は第三の脳」—— タイピングとそろばんが育む未来の能力

ータイピングとそろばんが「指を使う」という共通点・親和性についてですが、タイピングも脳に良い影響があるのでしょうか?

卜部:「指は第三の脳」と言われるように、指先の活動が脳を活性化させることは間違いありません。指と脳の確かなつながりは科学的にも裏付けられています。

そろばんもピアノもタイピングも共通するのは「体で覚える技能」だということです。暗記とは異なり、一度身につけば一生ものになります。パソコンを打っているときに指が自然に動くように、指で単語を覚えることができるのです。

従来の勉強法では、単語をノートに何度も書いて覚えるという方法が一般的でした。しかし、タイピングなら半分ゲーム感覚で楽しみながら学べるのです。継続するためには「楽しさ」が不可欠です。修行のように苦しくては長続きしません。そろばんと英語タイピングという指を使った学びを通じて、一生役立つスキルを楽しく身につけられる「ハイブリッド(伝統的なそろばん:アナログ的)+(革新的なタイピング英語:ハイテク的)」な塾として子どもたちをサポートしてまいります。

AI時代を生き抜くための「算数力」と「英語力」

ー『そろばん塾ピコ(アンビシャス)』に入会を考えている方達へ、メッセージをお願いいたします!

卜部:AI・IT技術が進化する現代、新たなスキルが次々と求められています。しかし、どんな時代になっても変わらない基礎力があります。それが「算数力(絶対暗算力)」と「英語力」です。

算数の土台を形成するそろばん学習と、IT社会に不可欠な英語力。この2つは受験だけでなく、人生を生き抜くための大きな武器になります。

ともすれば目先の受験対策に目を奪われがちですが、小学校低学年からそろばんでしっかりと基礎力を築き、同時に英語力も身につければ、受験でも大きなアドバンテージを得られます。そして、その効果は社会人になってからも続きます。入社試験でも英語は重視されますし、両方とも一生役立つスキルなのです。

私たちがお届けする教育で、お子さまが自信を持って人生を歩める基盤を作りませんか。未来社会で優位に立てる人材育成 —— それが私たちの願いです。