放課後等デイサービスとフリースクールを組み合わせた新しい形の支援施設が注目を集めています。 大阪市に2023年4月にオープンした「そらの木学園」は、不登校の子どもたちの居場所として、独自の支援方法で子どもたちの成長をサポートしています。 今回は代表の増谷さんに、施設の特徴や想いについてインタビューしました!
フリースクール型放課後等デイサービスの新たな形
ーフリースクール型放課後等デイサービス「そらの木学園」について教えてください。
増谷さん:当施設は、主に小学4年生~中学3年生を対象とした、フリースクール型放課後等デイサービスとなっております。発達障がいの特性を抱えた子たちや不登校の子どもたち、学校に行きづらさを感じている子たちへの居場所づくりや今とこれからを考えた自立へのサポートを行っています。
また、集団での活動が難しい子どもたちや具体的な目的がないと外に出にくいといったニーズも多くあるため、フリースクールのコースとは別に個別コース、クラブ活動、ゲームサークルなど、小学1年生~高校3年生まで年齢の面でも幅を広げて、サポートをしています。
特徴について
ーそらの木学園の特徴的な部分を教えてください。
増谷さん:当施設の最大の特徴は、放課後等デイサービスとフリースクールの機能を組み合わせている点です。 放課後等デイサービスの中で、不登校の子たちを受け入れている施設は最近見られるものの、不登校の子たちに特化したサポートをしているところはまだまだ少ないように思います。
また、フリースクールの視点から見ると、発達特性に対する知識がないことで対応が難しくなる点や公的な経済援助が少ない点からスタッフを雇うことが難しく、ボランティアの方が中心になることも多い現状があります。 しかし、このフリースクール形放課後等デイサービスという形を、専門的な視点や経験を持つスタッフがサポートをすることにより、 不登校の子たちに特化し、かつ発達特性での課題に対するサポートを行うことができます。
また、福祉サービスの利用料になるため、ご家庭の経済的な負担を抑えることができるため 経済的事情で通えない子たちにとっても、通いやすくなっています。 もう一つの特徴は、「楽しい!」を第一にしていることです。 人と関わる「楽しい!」には、エネルギーを回復したり、安心感を得られたり、人を大切にする気持ちやこれからの人生を楽しく生きる方法を学ぶためなど、たくさんの栄養素が詰まっています。
来所される方からは「本当にここの子どもたちは不登校なの?」と驚かれることが多いのですが、それは、人との関わりを楽しみ、自由に自分らしさを表現できる環境があるからだと考えています。スタッフ全員が、子どもたちの個性を否定せず、その子らしさを大切にする関わり方を心がけ、一緒に楽しむことを大切にしています。
柔軟な受け入れ体制と運営方針
ー具体的な運営方法について教えてください。
増谷さん:様々なニーズに合わせるため、フリースクールコースだけでなく、さきほどお話した、個別コースやクラブ活動、ゲームサークル以外にも、女子会やコミュニケーション、寺子屋など様々なコースを作りました。 不登校の子ども向けのフリースクールコースは週4回、10時半から15時までの時間帯で運営しています。
一般的な放課後等デイサービスは午後からの運営が多いのですが、当施設では日中の時間帯に活動しています。 個別コースでは、基本的にスタッフと1対1の対応を行っています。同じ空間に他の生徒もいますが、最大でも2名程度と少人数制を維持しています。全体の在籍者は30名ですが、一日の利用は最大で10名程度となっています。
設立の経緯と想い
ーどのようなきっかけで事業を始められたのでしょうか。
増谷さん:私自身も不登校を経験しており、そういった子どもたちの支援をしたいという思いを持っていました。 加えてフリースクールやサポート校、通信制高校、自閉症専門の療育施設、発達障がい専門の塾など様々な困りごとのある子どもたちのサポートをボランティアやお仕事の中で知っていくことで、発達障害や不登校の子たちの理解が深まっていったこともきっかけの1つです。
また、その経験の中でたくさんの不登校の子や自信を無くしていた子たちを見てきました。 そこから、安心した環境の中でたくさんの楽しさやできごとを経験することで、前に進めるようになった子たちもたくさん見てきました。
初めは自信がなくて下を向いていた子たちが、希望をもって進めるようになる瞬間は本当に言葉にできないほどの感動があります。自信がわいたり前向きになると、自然と上を向けるようになっていきます。
「そらの木」という名前も、空(上・希望)の方に向かってのびのびと、自分らしくたくましく成長してほしいという思いから、名付けています。 よく空にある木と思われがちですが、「空、希望へとぐんぐん伸びる木」という意味なんです。
子どもたちが、これからの人生を強く楽しく幸せに生きてほしい、今をまず安心して楽しく過ごしてほしい、そんな場所を作りたいという気持ちが大きなきっかけです。
利用者と関わる際に意識しているポイント
ー利用者の方と接する際にスタッフの方々が意識されていることはありますか。
増谷さん:特に「一人一人と真剣に向き合うこと」を大切にしています。 不登校、発達障害の特性がある子どもとひとくくりにせず、一人一人の気持ちや個性、抱えている課題、輝いているところと向き合い、寄り添い、関わっています。 また、そらの木学園に来るまでに、学校や人間関係などがきっかけで自信を失っている子たちが多くいます。
そのため、私たちは、できないことを指摘したり注意していくのではなく、その子目線での頑張りや表現を受け止め、励またりほめることで、自分自身の魅力に本人たちが気づいて自己肯定感を高められるよう、たくさんお話をしています。
他には、スタッフの対応に関しては、基本的な姿勢以外は過度にマニュアル化せず、それぞれが自然体でいることを方針としています。これは子どもたちにとって、形式的な関わりはすぐに察知し、人に対して本当の意味での信用ができなくなってしまうからです。
スタッフ本来の個性、人間性を大切にしながら、一人一人の子どもたちについてどうしていけばよいのかを共有しています。 スタッフの人数は現在、アルバイトを含めて10名のスタッフが在籍しています。
今後の展望
ー今後の事業展開についてお聞かせください。
増谷さん:フリースクール型の放課後等デイサービスという形態は、私たちが先駆けとなって始めた取り組みですが、この 2 年間の運営を通じて、不登校の子どもたちやそのご家族からの需要が非常に高いことを実感しています。特に経済的な理由で従来のフリースクールに通えないというご家庭からの相談が今でも多く寄せられています。
そこで、考えているのが教室を増やすことです。 ただ増やすことではなく、様々な形でのサポートの方法を検討しています。 ただし、規模が拡大することで大切にしているサポートの根幹の部分が崩れないように 慎重に進めていきたいと思っています。
しかしながら、今ある教室、目の前の子どもたちがが第一と考えているので、 まずは今通ってくれている子どもたちと全力で向き合い、サポートしていきたいと思っています。 また卒業後の進路支援にもしっかり目を向けていきたいと考えています。 子どもたちと一緒に高校見学に行くなど、より深くこれからのことを一緒に考えていきたいと思っています。
読者へのメッセージ
ー最後に、読者へメッセージをお願いいたします。
増谷さん:保護者の方々は、お子さんの不登校に直面して、将来への不安を抱えていらっしゃるかもしれません。「このままで大丈夫だろうか」「何か手を打たないといけないのでは」という思いの方もいらっしゃることと思います。 そんな時は一人で抱え込まずぜひ専門機関に相談してみてください。
そらの木学園では、無料で見学や体験利用を随時受け付けています。もちろん、保護者の方のみの見学でも構いません。実際の雰囲気を感じていただき、お子さんに合った場所かどうかを見極めていただければと思います。
また強くお伝えしたいことは、必ずしもそらの木学園である必要はないということです。 それぞれのお子さんに合った場所が必ずあるはずです。 子どもたちが、自分に合った場所や人と出会い、「これだ!」と思える道に繋がることを心から願っています。