高齢化社会が進む日本において、いかに健康で活動的な生活を送るかは多くのシニア世代の課題となっています。
日本シニアヨガ協会は、高齢者向けのヨガを通じて、心身の健康維持だけでなく、シニア世代が講師として活躍できる場を提供しています。代表理事の足立由喜子さんに、同協会の取り組みや今後の展望についてお話を伺いました。
全国に広がるシニアヨガのネットワーク

ー日本シニアヨガ協会の概要について教えてください。
足立:拠点は東京都江戸川区小岩にある本部スタジオです。日本全国に講師が徐々に広がっており、それぞれのフィールドからシニア・高齢者の方々にヨガのレッスンを提供しています。
コロナ禍で活動が難しい時期もありましたが、東京都ではリアルでお会いできる機会が増え、講師を育成する養成講座も春と秋の年2回開催しています。
地方の方々もオンラインで養成講座を受講でき、日本シニアヨガの認定講師として全国で活動いただいています。
地域の健康事業から見えた課題への挑戦
ー協会を設立されたきっかけを教えてください。
足立:私自身が、高齢者の方々を対象に健康事業を推進する江戸川区の施策に携わってきました。ダンスや音楽を使った体操、脳トレなどを通じて、参加者の健康寿命延伸を目指してきたのです。
しかし、年齢を重ねるにつれて参加者が減っていく現実に直面しました。歩行速度が落ちたり、介護が必要になる方が増えていく中で、元気なシニアの方々が減少していくことに危機感を覚えました。
少子高齢社会において、シニアの方々が自身の健康を維持し、社会の一員として活躍することの重要性を感じたのです。
そこで、シニアの方が元気になれるシニアヨガを提供するNPO法人を2020年に立ち上げました。ヨガは体だけでなく心も強くする生きる知恵の一つだと考えており、行政と連携しながら社会に広めていきたいという目標を持っています。
シニアがシニアを元気にする独自のアプローチ
ー他のヨガを教える団体にはない特徴や、一番のアピールポイントを教えてください。
足立:若い方がシニアヨガを教えるのではなく、シニア世代自身が講師として活躍している点が大きな特徴です。
NPO法人を立ち上げる際、65歳や75歳の方々が講師になれることを目標の一つとして掲げました。現在では70代の先生もおり、65歳以上の講師が珍しくない環境ができています。
ヨガというと若い方が若い方に教えるイメージが強いですが、私たちは「元気なシニアが元気なシニアを育てる」という考え方で活動しています。
年を重ねても講師として活躍できる場を提供することで、シニア世代が生き生きと過ごせる社会づくりに貢献したいと考えています。
安全性と健康を最優先にした椅子ヨガ
ーヨガの指導をする際に、特に意識していることや方針について教えてください。
足立:シニアの方々の身体状況に合わせた安全なレッスンの提供を心がけています。
いきなりマットの上で深いポーズを取ることは、筋力が衰えていたり、骨粗しょう症の方にとって怪我のリスクがあります。そのため、主に「椅子ヨガ」を中心に指導しています。
椅子に座ることで骨盤が立ちやすく、疲れたら背もたれでリラックスすることもできます。高血圧など複数の疾患を抱えている方や、人工関節を使用している方も多いため、床との高低差が少ない椅子を使用することで安全面に配慮しています。
誰もが参加しやすい料金設定
ー提供しているコースやプランについて教えてください。
足立:高齢者の方々が気軽に参加できるよう、リーズナブルな料金設定を心がけています。オンラインのクラスでは、1か月間受け放題で3,000円、リアルクラスは5,000円と設定しています。
毎日朝9時30分から10時15分まで45分間のレッスンを、土日も含め毎日実施しています。また、午後のオンラインクラスや講師が自宅から配信するクラスもあり、ほぼ毎日どこかのクラスに参加していただくことが可能です。
全国展開によるシニアヨガの普及を目指して
ー今後より強化していきたい部分や、取り組んでいきたいことについて教えてください。
足立:「日本シニアヨガ」という名称のとおり、東京だけでなく全国の高齢化問題に取り組みたいと考えています。
日本では3人に1人が60歳以上と言われる中、各地方にシニアヨガができる場所や指導者を増やしていくことが大きな目標です。
養成講座を通じて認定講師を増やし、全国どこでもシニアの方々が安心してヨガを楽しめる環境づくりに取り組んでいきたいと考えています。
心身ともに平和な毎日のために
ー最後に、記事をご覧の方へのメッセージをお願いします。
足立:年齢を重ねることは避けられませんが、QOL(生活の質)を高く保つことはできます。健康であり続け、最期まで自分の足で歩き、自立した生活を送るために、体を鍛えることは重要です。
シニアヨガでは体を動かすだけでなく、瞑想や呼吸法も取り入れ、心の平和も大切にしています。年齢を重ねると死や病気への恐怖を感じることもありますが、穏やかに平和に生きる喜びを感じながら、最期の日を迎えていただきたいと思います。
私たちは、心身ともに平和で幸せな日々を過ごし、「ありがとう」と自然に周囲に感謝の言葉をかけられる状態で人生を全うできるよう、ヨガを通じてサポートしていきます。