医療的ケアを必要とする子どもたちとその家族に寄り添い、地域に根差した支援を展開する「燕メタセコイアの会」。
医師である理事長を中心に、充実した医療面でのサポート体制のもと、障害を持つ子どもたちの日中預かりを行っています。
施設「ロンディーネの森」での支援を通じて、子どもたちの可能性を広げ、家族に寄り添う取り組みについて、「燕メタセコイアの会」の松宮孝子さんにお話を伺いました。
医療ケアが必要な子どもたちの「駆け込み寺」として

ー どういった方を対象に、どのような支援を行っていらっしゃいますか?
松宮さん:寝たきりや呼吸器、酸素・経管・栄養などの医療的ケアが必要なお子さんたちを対象として支援しています。
支援内容としては、未就学児から就学児、卒業後まで幅広い年齢層に対して日中預かりのデイサービスを提供していて、生活支援はもちろんのこと、理学療法士によるリハビリも行い、お子さん一人ひとりの発達を促す支援を実施しています。
また、事業所に来ることができない重度の方には、ご自宅への訪問支援も行っています。
さらに、学校や保育園等への訪問を通じて、お子さんに関する助言や情報共有も積極的に実施しています。
散在する医療的ケア児を地域で支える使命
ー このような支援をされるようになった背景やきっかけについて教えてください。
松宮さん:医療的ケアが必要なお子さんたちをサポートする施設は、地域内でも数が多くはありません。
また、私たちの地域は広域に渡っており、支援を必要とするお子さんたちが点在している状況でした。
そのため、なかなか支援が行き届かず、子どもたちが頼れる場所が地域になかったのです。
たとえ少数でも、このような子どもたちを支えることができればという思いから、法人を立ち上げました。
医療面でのサポート体制の充実が生む安心感

ー 活動をされていく中で、一番の強みに感じていらっしゃることは何でしょうか?
松宮さん:燕メタセコイアの会の最大の強みは、理事長が医師であることです。
これにより、保護者の方々に大きな安心感を持ってお子さんを預けていただけています。
また、医療面での支援が手厚く、看護師や理学療法士といった医療従事者も充実しているのが特徴です。
子どもたちの日常に寄り添う支援
ー デイサービスにお越しになるお子さん達は、日中どのように過ごされているんですか?
松宮さん:日中は集団活動を通じて、皆で同じ場面を共有しています。
季節の行事やイベントを楽しんだり、それぞれが持っている力に応じた個別の活動を行っています。
皆で一緒に食事をしたり、入浴介助を行ったり、リハビリを受けたりと、集団での活動と個別の時間をバランスよく設けています。
一人ひとりの「声なき声」に耳を傾ける

ー 支援をされる中で大切にされていることはどういったことでしょうか?
松宮さん:燕メタセコイアの会が目指す地域密着型支援で最も大切にしていることは、言葉を発することができない子どもたちの「声なき声」を聴くことです。
スタッフ全員が子どもたちの小さなサインを見逃さないよう心がけています。
また、日々大変な思いをされている保護者の方々に寄り添い、地域全体で支えていくことを意識していて、家族も含めた包括的な支援を、スタッフ全員で実践しています。
お子さんの変化が教えてくれる支援の手応え
ー 事業所に通い慣れてきたお子さんたちに、どのような変化が見られますか?
松宮さん:「ロンディーネの森」に通う子どもたちは、自分の感情や思いを表現することが難しい場合が多いです。
保護者の方々は微妙な表情の変化で子どもの気持ちを読み取ることができますが、スタッフも日々の関わりを通じて、徐々にそれぞれの子どもとの独自のコミュニケーション方法を見出していきます。
最初は互いに手探りの状態ですが、時間とともに表情が柔らかくなったり、体調が整ってきたりする変化が見られます。
子どもさんは慣れてくると楽しい時に笑顔を見せてくれますが、より深い関係性が築けてくると、「あれがしたい」「これがしたい」という要求や、寂しさ、辛さ、構ってほしい気持ちなど、様々な感情を表現してくれるようになります。
まるで自分の家のようにリラックスした姿を見せてくれるようになると、私たちも子どもたちが心を開いてくれたことを実感し、嬉しくなります。
より良い支援の輪を広げていくために
ー 今後の展望についてお聞かせください。
松宮さん:燕メタセコイアの会は、保護者の方々の「あったらいいな」という声から始まった事業です。
これまで保護者の方々のニーズを反映したサービスを提供できるよう努めてきましたが、まだまだ支援が足りていない部分が多くあります。
私たちだけでなく、様々な方々の力をお借りしながら、地域全体で保護者の方々が住みやすい環境を作っていきたいと考えています。
他の機関との連携体制を築き、多くの人々の力をお借りしながら、より広い支援の輪を作っていくことを目指しています。
ー この記事を読まれる方へメッセージをお願いできますか?
松宮さん:支援を必要とする子どもたちが実際に地域に存在していることを知っていただき、それぞれができることを考えるきっかけになればと思います。
私たちは子どもたちと楽しく過ごす中で、彼らの持つ素晴らしいパワーに日々助けられ、学びと喜びをいただいています。
ぜひ多くの方々に、このような世界があることを知っていただき、共に支え合える社会を作っていければと願っています。