沖縄県を拠点に活動する「特定非営利活動法人 困窮者支援ネットワーク」は、子どもの貧困問題を解決するために立ち上がった団体です。沖縄特有の課題である高い貧困率やひとり親家庭の多さを背景に、子どもたちへの食支援や学習支援を中心に取り組んでいます。さらに、子ども食堂や地域の支援団体をつなぎ、活動を支える中間支援の役割も果たしています。
団体設立のきっかけは、沖縄県内で点在する子ども支援団体が連携を欠いていた現状を改善するためでした。現在は、休眠預金を活用して資金支援を行いながら、運営ノウハウの提供や伴走支援を行うなど、団体が継続して活動できる仕組みづくりに注力しています。戦後の歴史や産業構造に起因する沖縄の社会問題を背景に、短期的な支援だけでなく、長期的な貧困の連鎖を断ち切ることを目指しています。
本記事では、団体の具体的な活動内容や設立の背景、さらには未来への展望について詳しく解説します。沖縄の未来を支える取り組みと、その中心にある人々の思いをご覧ください。
沖縄での活動と団体の概要
ーまずは、困窮者支援ネットワークの概要について教えてください。どのような活動をされているのでしょうか?
困窮者支援ネットワーク理事 宮園さん(以下敬称略):私たちは沖縄県を拠点にして、子どもの貧困対策に関わる活動を行っています。主に、困窮家庭の子どもやひとり親家庭の子どもたちを支援する食事支援や学習支援を中心に活動していまして。あとは、地域の支援団体をつなぐ中間支援の役割も担っていますね。
ー具体的な活動内容について、もう少し詳しくお聞かせください。
宮園さん:そうですね、団体を立ち上げて今ちょうど3年経ったところなんですけど、最初のきっかけはですね、沖縄県内にある子ども食堂や子どもの居場所っていうのが、それぞれバラバラに活動していたことなんです。個々で活動していると、なかなか横のつながりができなくて、支援の結束力が生まれにくいんですよね。それで、「じゃあ、そういう団体をつなげるネットワークを作ろう!」っていう話になって、活動が始まりました。
今は、子どもたちへの食事支援や学習支援を中心に行いつつ、2年前からは「休眠預金」を活用した資金分配団体としての役割も担っています。これはですね、支援を必要としている団体に資金を提供するだけでなく、運営のノウハウや伴走支援をする活動です。つまり、支援団体が継続的に活動できるようなサポートも行っているんですよ。
団体設立の経緯と目的
ーもともと、こちらの団体は実際に子ども食堂や学習支援を運営されていたんですか?
宮園さん:はい、そうなんです。去年の10月までは私たち自身も直営で子ども食堂を運営していたんですが、運営を引き継ぎたいという団体が出てきたので、現在は中間支援に特化する形に移行しました。直接的な支援をするだけじゃなくて、より多くの団体が活動できるようにサポートすることで、地域全体の支援体制を強化していきたいと考えています。
沖縄の貧困問題の背景
ー沖縄では全国的にも貧困率が高いと言われていますが、どのような背景があるのでしょうか?
宮園さん:そうですね、一番大きいのはやっぱり産業構造です。沖縄って観光業に特化していて、大企業がないんですよ。本土では中小企業と呼ばれる規模の会社が、沖縄では「大企業」みたいな扱いになっていて、なかなか安定した雇用が生まれにくいんです。それに加えて、コロナの影響で観光業が大打撃を受けてしまって、そこからの回復もまだ完全ではないですしね。
それからもう一つ、歴史的な背景も大きいですね。沖縄って戦後30年間、アメリカの施政下にあったんですよ。その間、日本の本土で進められていた福祉政策が沖縄では適用されなかったんですね。だから、その時期にしっかりした社会保障が整わなかったことで、今もまだ貧困が根深い問題として残っているんです。
子どもたちを支援する上で意識していること
ー支援活動をする中で、特に意識していることはありますか?
宮園さん:私たちは「子どもの支援をする」と言っていますが、実は親御さんへのアプローチもすごく大事だと思っています。というのも、困窮家庭の親御さんの中には発達障害を抱えている方が多い傾向があるんです。これは戦後教育が十分に受けられなかった影響もあって、親御さん自身が「どうやって子どもを育てたらいいのかわからない」という状況になっているんですね。
なので、子どもたちに学習支援をするだけじゃなくて、親御さんにもカウンセリングをしたり、相談の場を作ったりすることがすごく重要なんです。親御さんが孤立せずに、ちゃんとサポートを受けられる環境を作ることで、子どもたちもより良い環境で育つことができるんじゃないかなと。
今後の展望と目指す未来
ー今後、特に力を入れていきたい取り組みはありますか?
宮園さん:今は休眠預金を活用して活動をしているんですけど、これはあくまで一時的な資金なんですね。なので、いつまでも頼ってはいられない。今後は、いかに自走できる仕組みを作るかが課題です。
沖縄の企業はまだ資金的な余裕が少なく、県内の企業からの寄付だけに頼るのは難しい状況です。だからこそ、行政との連携をもっと強化していきたいと考えています。行政が支援を「一時的なプロジェクト」ではなく、「継続的な政策」として取り組んでくれるように働きかけることが、私たちの今後の大きな目標ですね。
支援者・関係者へのメッセージ
ー最後に、支援を検討している方々へのメッセージをお願いします。
宮園さん:沖縄の貧困問題は本当に根深いものがあります。短期的に何かをすれば解決するものではなく、長期的に取り組んでいく必要があります。ただ、そのためには私たちだけの力では限界があるんですよね。やっぱり、行政や企業、そして地域の方々の協力が必要なんです。
子どもたちが安心して暮らせる社会を作るために、一緒に取り組んでくださる方が増えたら本当に心強いです。どんな形でもいいので、ぜひ関わっていただければと思っています。一緒に沖縄の未来を変えていきましょう!