震災を忘れない。福島の子どもたちに演劇で笑顔を届けるNPO法人Inseki Project

子どもたちが主役の復興支援―。福島県で毎年続けられる特別な演劇活動があります。全員参加型の演劇を通じて、子どもたちの心に寄り添うNPO法人Inseki Project。原発事故の影響が残る被災地で、演劇という形で希望を紡ぐ団体の13年間の軌跡を追いました。

東日本大震災の被災地に演劇を届ける – NPO法人inseki projectの取り組み

-まずはじめに、Inseki Project様の活動内容について教えていただけますでしょうか。

中里さん:私たちの法人の主な活動は、演劇を通じて子どもたちに元気を届ける活動です。現在は主に福島県の子どもたちを対象に活動を展開しています。年に1~2回のペースで公演を行っており、1回の活動で3~6カ所ほどを巡回しています。

設立の経緯と活動のきっかけ

-設立のきっかけについて教えていただけますでしょうか。

中里さん:当初は何か支援をしたいという思いから始まり、情報収集をする中で、ある劇団がボランティア公演を行うという話を耳にしました。当時、学校が避難所になっており、子どもたちは学校行事も中止になっていました。

2010年に環境問題の活動を目的として法人を設立しましたが、その直後に東日本大震災が発生。2011年7月頃にボランティア公演の話を聞き、活動を開始し、同年11月に最初の公演を実施しました。

活動の特徴と強み

-御社の活動における特徴や強みについて教えてください。

中里さん:私たちの特徴は、毎回現地の子どもたちに参加してもらう形式をとっていることです。5~10人ほどの子どもたちが実際に演技に参加し、さらに前回の公演では、客席の子どもたち全員が紙飛行機を投げるシーンを設けるなど、観客全員が物語に参加できる工夫をしています。

また、オリジナルの脚本を用意し、現地の子どもたちのニーズに合わせた内容を提供しています。

支援活動における意識

-支援する際に意識されていることはありますか。

中里さん:子どもたちに元気を届けることを第一に考えています。ただ、最近は震災を知らない子どもたちが増えてきており、環境自体は復興が進んでいます。

周りの大人から話は聞けても、実際には体験していないため分からないという子どもたちが多くなってきています。そのため、これからは震災の経験や記憶を伝えていく劇を作っていきたいと考えています。

今後のビジョンと課題

ー今後の取り組みについて教えてください

中里さん:私たちの大きな目標は、演劇を通じて大切なメッセージを届けることです。特に、被災された方々が伝えたいことを、演劇作品として他の地域の方々に届けていきたいと考えています。

また、能登半島地震の被災地など、他の地域への支援も視野に入れていますが、まだ団体としての体力が十分ではないため、実現には至っていません。

支援の方法

-支援したい方々に向けて、どのような方法がありますか。

中里さん:現在、3月下旬に予定している福島での公演に向けて、クラウドファンディング(2025年2月28日まで)を実施しています。これまでは主に助成金を活用して活動してきましたが、今回は予定していた助成金が終了してしまったため、クラウドファンディングという形で資金を募っています。また、保育園の子ども達から小学生まで楽しめるオリジナル劇5作品の公演依頼も随時受け付けています。

読者へのメッセージ

ー最後に読者へのメッセージをお願いします。

中里さん:近年、能登半島地震をはじめ、日本各地で災害が多発しています。その中でも東日本大震災は特に大きな災害であり、特に福島の方々は、原発事故の影響など、今なお解決できない問題を抱えて暮らしていらっしゃいます。

震災から時が経ち、メディアでの報道も減少していますが、被災地の現状や課題は続いています。3月11日という節目の日だけでなく、普段からも被災地のことを少しでも心に留めていただき、できる範囲での支援をご検討いただければ幸いです。