子どもから大人まで、年齢を問わず書道の楽しさを伝える「依空書道教室」。
教室主宰の吉川依空さんは、ご自身の経験から「お稽古が気晴らしになる居場所」であることを大切にし、教室運営に活かしています。
厳しいイメージの書道を、おしゃべりしながら和気あいあいと楽しめる場所に変えた教室の魅力に迫ります。
年齢問わず誰でも通える柔軟なレッスン体制

ー依空書道教室ではどういった方を対象にどのような指導をされていますか?
吉川さん:対象は子どもから大人までどんな方でも通っていただけます。
具体的には子どもさんであれば自分で片付けや準備ができるお子さん、また、難しいお子さんも保護者の方が同席してということでしたら受けています。
大人の方は特に上限は設けていないので、やりたい方はどなたでも歓迎しています。
基本的には2時間のクラスの枠があって、その中で好きな時間に来て帰っていただいて構いませんという形にしています。
毎月「書道日本」という課題や成績を掲載している競書誌があり、その課題に沿って、それぞれ子どもだったら各学年の課題を、こちらで用意したお手本を見ながら練習をしていただく形になります。
大体子どもさんは1回につき、半紙10枚ぐらいを目安にしていただいていまして、4、5枚書いたところで一度私が赤で添削して、声をかけながら、あと5枚書いて、一番上手に書けたものに名前を書いて提出していただくという形です。
ー大人の方も皆様同じレッスン内容ですか?
吉川:基本は同じです。
大人の方については、3種類の書体が課題で出ているので、好きなものを書いていただけます。
1種類だけでも、3種類書いても構いません。
月に3種類書いたとしても、最終的に私が1つに絞って団体の方に提出するという形になりますが、基本的な流れは同じです。
自身の経験から得た「居場所」づくりへの思い

ー教室を始められたきっかけや背景について聞かせていただけますか?
吉川さん:元々私は子どもの頃に書道を小学1年生から6年生まで習っていました。
私が通っていたところは基本的に先生が子どもしか教えていなかったので、小学校卒業と同時にその教室は辞めました。
そのまま特に他の教室を見つけることもなかったのですが、大人になって仕事を始めてから何か趣味を持ちたいと思って、今でも教えていただいている先生のところをたまたま見つけて通うようになりました。
その先生が、大きな展覧会でも審査員をされるような先生だったので、指導を受ける中で、大きいサイズの作品を書いたり展覧会に出したりするようになっていきました。
私自身、子どもの頃を振り返っても大人になってからも、お稽古(お教室)が気晴らしというか、学校でも家庭でも職場でもない、もう一か所の自分の居場所みたいなものになりました。
私が現在の先生について20年近くになりますが、先生や一緒に習っている書友との時間は今でもとても楽しいものです。
私もそういう時間や場所を提供できればと思い、教室を始めました。
「楽しい思い出」を大切にした指導方針
ー生徒さんが入室される際に大切にしていることや、意識していることはありますでしょうか?
吉川さん:やはり一番は楽しんでもらうということです。
私もそうでしたが、子どもは中学生になると部活があったり、高校生になる時は受験があったりと、なかなかずっと続けていくのは難しいかなとは思います。
でも、やはり私も楽しかった思い出があったからこそ、大人になって何かやりたいと思った時にハードルが低く、「やってみよう」と思えたのです。
ですから、まず子どもさんには楽しかった思い出を持ってもらえるように心がけています。
字の形が綺麗であるのはもちろんですが、元気よく強く書けたことや、私に指摘されたところが直っている、今日は集中できていた、前回よりたくさん書いたなど気付いたところを褒めるようにしています。
少しずつでいいので、できることが増えていって「楽しかったな」という思い出になるようにというのは意識しています。
幅広い年齢層が集う和やかな教室環境
ー実際に提供されているレッスン体系について教えてください。
吉川さん:子どもさんも大人も同じです。皆に講義をするというよりは、一人一人に個別の指導というイメージです。特に大人の方は、それぞれに違う目的をもって通われているので、それに合わせた指導をしています。
ー教室は幅広く時間帯で設けていらっしゃいますが、大人の生徒さんも多いのですか?
吉川さん:今ちょうど半々くらいです。
午前中のクラスもありますし、私自身が仕事をしながら通っていた経験から、仕事帰りに通われる方のために夜のクラスも設けました。
将来的なビジョンと期待
ー今後、新たに取り組んでみたいことや、将来的なビジョンとしてお考えのことはありますか?
吉川さん:書道に対する多くの方のイメージは「きれいな文字をかけるように習うもの 」ではないかと思いますが、実際には文字を使った芸術です。
「道」がつくものですから、一朝一夕にはできませんが、絵画や音楽のように自分のペースでずっと続けていけるものです。
また、科学的な根拠はないのですが、私の70代の先生は50年ほど書道の世界にいらっしゃいますが、「今のところ書道をやっている人で認知症になった方を知らない」ともおっしゃっています。
あくまで先生の肌で感じていることだとは思いますが、今は文字を書くこと自体が減ってきているので、脳トレ的な意味も含めて年齢関係なく興味をもってもらえると嬉しいですね。
堅苦しくない、和気あいあいとした書道教室を目指して
ー最後に、入会を考えていらっしゃる方にメッセージをお願いできますでしょうか?
吉川さん:書道は多くの方が子どもの頃に学校で習うので、何となくイメージは湧くと思いますが、「すごく静かにやらなければいけない」「墨を磨って精神を集中してやるもの」といったような、厳しく堅いイメージだったと言われることも多いです。
でも、むしろ私はおしゃべりもしながら、場合によってはおやつなども持ち込んで、和気あいあいと自分のペースで楽しくやってもらえるような場所にしたいと思っています。
お習字とは違う「書道」の魅力を感じてもらえたら嬉しいです。
体験教室も開催していますので、興味のある方はぜひお気軽にお越しください。