「沖縄空手の精神を次世代へ」栄武館が伝える武道としての空手とその可能性

沖縄空手の代表的な流派のひとつ「沖縄剛柔流」を、大阪の地で指導する空手道場・栄武館。

子どもからシニアまで幅広い年齢層に対して空手の稽古を提供しながら、「武道」としての空手の精神と技術を受け継ぐ指導を実践されています。

今回は、代表の辻康彦さんに、道場の特徴や指導の考え方、今後の展望について詳しくお話を伺いました。

希望に合わせて「武道」と「競技」の両面を指導

ーーどういった方を対象に、どのような指導を行っていらっしゃいますか?

辻さん:現在は4歳のお子さんから、上は70代の方まで通っています。

中心は沖縄空手です。ただ、希望されるお子さんには競技空手の指導も行っていて、大阪府空手道連盟にも加盟しています。

沖縄空手は本来、競技志向ではない伝統的な武道なのですが、子どもたちにとって大会という経験は大きな成長のきっかけになりますので、希望者には競技指導も行います。

沖縄剛柔流との出会い

ーーこの道場を始めたきっかけを教えてください。

辻さん:自分の道場を開設したのは平成14年(2002年)9月23日でした。

当初は本土の剛柔流で活動していたのですが、平成21年から「沖縄剛柔流空手道協会」に正式に入会し、それ以降は大阪における沖縄剛柔流の支部道場として活動しています。

本土の剛柔流とは違い、沖縄の剛柔流は技術体系も異なります。

本来の空手の姿に触れ、そこから深く学びたいと思ったのが転機でした。

多様なニーズに対応

ーー道場の特徴やアピールポイントを教えてください。

辻さん:まず、武道としての空手の指導に力を入れています。

小さいお子さんには、礼儀や姿勢をしっかり身につけてもらうことから始め、ご高齢の方には“健康空手”として、足腰をしっかり鍛えられるように、内転筋・大腿四頭筋・腸腰筋などを意識した稽古内容にしています。

一方で、競技を目指す子どもには、大会で通用する内容も指導しています。

希望や目的に応じて指導を変えることで、誰もが無理なく続けられる環境を整えています。

また、栄武館には外国にルーツを持つ道場生が数名いて、言葉や文化も違う中、助け合い励まし合いながら和気あいあいと稽古に励んでおります。

個別性を重視した指導

ーー指導の際に意識していること、大切にしていることはありますか?

辻さん:生徒さん一人ひとりのレベルや目的に合わせた指導をすることです。

中には激しい組手を望まれる方もいますので、そういう方にはそれに応じた内容を提供できます。

ただ、基本的には“形”と“基本”をじっくり丁寧に教えていくスタイルです。

例えば、お子さんの集中力や体力、性格に応じて稽古の内容や伝え方も変えます。

形の稽古を重ねることで、自然と身体の使い方や精神の安定を学べるのが沖縄空手の魅力ですね。

子どもたちの変化

ーー道場に通い始めてから、お子さんたちの様子にどんな変化がありますか?

辻さん:保護者の方からよく言われるのは、「挨拶ができるようになった」「靴をきちんと並べるようになった」といった礼儀面での変化ですね。

今では珍しいかもしれませんが、当道場は比較的厳しい指導をしています。

ただ、その分、家庭でも保護者の方の言うことを聞くようになったという声を多くいただきます。

「何かあったら館長に言うよ」と言うと子どもたちもピシッとするそうです(笑)。

稽古スケジュールと担当道場

ーー具体的な稽古時間や曜日、道場の場所について教えてください。

辻さん:稽古時間は、子どもがだいたい2時間〜2時間半ほど。大人はそのあと1時間弱稽古しています。

仕事帰りに遅れて来られる方もいらっしゃるので、最終的には21時〜21時半ごろまでやっていることもあります。

曜日と場所は次の通りです:

  • 月曜日:平野道場(担当:副館長・花峯)
  • 火曜日:天王寺道場(担当:辻)
  • 水曜日:阿倍野道場(担当:副館長・花峯)
  • 木曜日:生野道場(担当:辻)

今後の展望

ーー今後、道場として強化していきたいことや新たな取り組みはありますか?

辻さん:毎年11月に、沖縄から無形文化財保持者である喜久川政成先生を招いて、セミナーを開催しています。

これは非常に貴重な機会で、沖縄空手の本質に触れられる学びの場です。

また、コロナの影響でここ数年開催できていなかった演武会も、全道場の生徒が集まって再開したいと考えています。

やはり人前で演武することは、稽古の成果を発揮するだけでなく、自信にも繋がりますからね。

空手は生涯できる、心と体を育む“道”

ーー道場に興味を持たれた方へ、メッセージをお願いします。

辻さん:空手は何歳からでも始められる武道です。

体だけでなく、心も鍛えることができます。

お子さんと一緒に始められるご家庭もありますし、健康づくりのために始められる方も大歓迎です。

私たちは、同じ剛柔流でも本土の剛柔流とは体系も技術面も異なります。その違いも含めて、ぜひ一度体験していただければと思います。