子どもたちの教育において、学力や運動能力の向上に注目が集まる一方で、感受性や創造性を育む場の重要性も高まっています。特に、繊細な感性を持つ子どもたちにとって、自分らしさを表現できる場所の存在は、健全な成長に大きな影響を与えると言えるでしょう。
神奈川県で活動する『こどもアトリエこぺん』は、そんな子どもたちの創造性を育む特色ある教室として注目を集めています。代表を務める河本奈々氏は、東京藝術大学 先端芸術表現科卒業出身の絵本作家。自身も感受性豊かな子ども時代を過ごした経験から、単なる技術指導にとどまらない、子どもたちの心に寄り添う場づくりを目指しています。
今回は河本氏に、教室の理念や指導方針、そして感受性豊かな子どもたちの可能性を育むことの意義について、詳しくお話を伺いました。
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絵本作家・保育士資格有
デンマークコペンハーゲン生まれ札幌育ち。
東京藝術大学 先端芸術表現科卒業。
油絵具などを使った、カラフルな色彩の絵画作品の他、
襖絵やイラストレーションも制作。
全国各地のギャラリーや百貨店などでの個展・グループ展多数
絵本や挿絵の出版物多数(福音館書店・講談社等)
2歳&3歳の年子姉妹のママ(2025年現在)
「繊細」を「才能」に変える学び舎として
ー河本さま、本日はどうぞよろしくお願いいたします!まずは、『こどもアトリエこぺん』の概要を教えてください。
河本奈々 代表(以下敬称略):3歳から15歳までの子どもを対象とした絵画教室で、絵画と工作の活動を行なっています。対象としているのは、絵や工作が大好きな子どもたちで、特に感受性が豊かで繊細な感覚を持つ子どもたちが多く通っています。強いこだわりを持っていたり、学校や園などで気持ちを言葉でうまく表現できなくても、作ったり描いたりすることが大好きで、夢中になってしまう、といったタイプのお子さんが多く集まってくれています。
ー具体的にどのような特徴がある子どもたちが多いのでしょうか?
河本:例えば、学校や園では運動や勉強などが苦手でも、創作活動が大好きな子どもたちですね。自分の思いを言葉で上手く表現できなくても、作品を通じて言葉を超えた表現を感覚的に楽しめる子どもたちです。ただし、生徒さんの特徴は本当に千差万別で、一概に「こういう子が多い」とは言えません。単なる絵画教室ではなく、たとえ他の場所では上手く自分を表現できなくても、絵や工作が大好きな子どもたちが、自分を認め、自信をつけていける居場所を目指しています。
創設者自身の経験が紡ぐ独自の教育哲学
ー『こどもアトリエこぺん』設立のきっかけを教えていただけますか?
河本:私自身が子どもの頃、感受性が強く繊細な子どもでした。そういった子どもでも、何かを作ったり描いたりすることに夢中になることで、それが感情の発散や癒しになることがあります。そういった繊細な子どもたちの心の居場所を作りたいという思いで、このアトリエを始めました。
実は、私自身も高校時代からメンタルヘルスの面で苦労した経験があります。そのような経験をする中で、子どものうちから自信や自己肯定感を育むことの重要性を強く実感しました。そこで、東京藝術大学を卒業後、作家活動の傍ら心理学やコーチングを学び、さらにはママ向けの心を整えるオンライン講座なども開催してきました。これらの経験や学びを、アトリエでの関わり方に活かしています。
「上手い下手」を超えた先にある、本当の成長
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ー他の絵画教室との違いや特徴を教えてください。
河本:私たちは単に絵や工作が「上手くなる」ことを目指しているわけではありません。もちろん、技術も必要に応じて伝えますが、絵や工作を通して、自分を好きになったり自信に繋げていくことをコンセプトにしているところが、他と大きく異なる点だと思います。
保護者の方からよく伺うのは、「ここでのびのび自分を表現できることで、子どもの心のバランスが保てている」「癒しの場になっている」といった声です。特に、学校や園などでストレスを抱えがちな子どもたちにとって、大好きなことに集中できる癒しの時間として、アトリエでの活動が大切な時間になっているようです。
作品より大切な「発見の瞬間」を育むために
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ー生徒さんに接する際に特に意識されていることはありますか?
河本:最終的な作品の出来栄よりも、制作過程でのプロセスを特に重視しています。例えば、絵の具で色々な色を混ぜているうちに最終的には真っ黒になってしまうこともありますが、そこに至る過程で子どもがどんな発見をし、どんなことを試してみたのかを大切にしています。その様子を保護者の方にも可能な限りお伝えするようにしています。
このような関わり方が功を奏してか、5年、7年と長期にわたって通い続けてくれる子どもたちも多くいます。中には12年という長期間、継続して通ってくれている生徒さんもいます。幼児期から小学校卒業まで、あるいは中学校卒業までという節目まで通ってくれる生徒さんが多いのも、弊アトリエの特徴かもしれません。
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ー各コースの特徴について、簡単に教えていただけますか?
河本:弊アトリエでは、3つのコースを設けています。
まず、3歳から6歳までの幼児クラス(Aクラス)。次に小学生向けのクラス(Bクラス)。そして小学3年生から中学3年生までの絵画専門クラスです。
幼児クラスと小学生クラスは、それぞれAクラス、Bクラスという名称で運営しています。これらのクラスでは、絵画、工作、粘土、木工など様々な素材を使って表現活動を行います。例えば、セロファンやビニール素材でコラージュ作品を作ったり、身近な素材を活用した創作活動を行ったりしています。
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一方、絵画専門クラスでは、より本格的な創作活動を目指す生徒さんを対象に、日本画や油絵など専門的な画材を使用した個別指導を行っています。自分の世界観を深め、より専門的に絵画を学びたい生徒さんのためのコースとなっています。
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アートの力で広がる心の世界
ー創作活動は子どもたちの心にどのような影響を与えていると感じていますか?
河本:保護者の方から多く伺うのは、アトリエでの活動が子どもたちの心の安定に大きく貢献しているという声です。学校生活などでのストレスを、創作活動を通じて発散できる場所として機能しているようです。
特に印象的なのは、言葉では表現できない思いや感情を、絵や工作を通じて表現できることで、子どもたち自身が心の安定を得ているという点です。これは私自身の経験とも重なるのですが、創作活動には確かにセラピー的な効果があるとも感じています。
通い続ける生徒たちが教えてくれること
ー今後の展望についてお聞かせください。
河本:嬉しいことに、小学生の頃から通ってくれていた生徒が大学生になり、アルバイトとして戻ってきてくれるケースも出てきています。ここでのびのびと表現活動をした経験が良い影響となって、自分のことを好きになり、自信を持って生きていける子どもたちがもっともっと増えていってほしいと願っています。
現在は個々の生徒さんとの関わりが中心ですが、将来的には卒業生のコミュニティなどもあったらいいなと考えています。長年通ってくれた生徒さんたちの成長を見守り続けられる場を作れればと思っています。
「好き」を究める場所が、未来の才能を育む
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ー最後に、『こどもアトリエこぺん』に興味をお持ちの方へメッセージをお願いします!
河本:好きなことに没頭することで、その子の強みが最も伸びていくと感じています。工夫することや、こだわりを表現することは、考える力、ゼロから何かを生み出す力につながります。これはAIが発達していく時代においても、必ず必要とされる力だと確信しています。
‟創造性” ‟工夫する力” ‟こだわりを表現する力” は、今後、一層重要になってくると考えています。目の前の好きなことを突き詰める場として、ぜひ『こどもアトリエこぺん』を活用していただければと思います。私たちは、そんな子どもたちの成長を全力でサポートしていきます。
私たちの教室は、単なる技術の習得の場ではありません。子どもたち一人一人の感性を大切にしながら、創造的な活動を通じて自己肯定感を育み、将来に向けて必要な力を身につけていける場所でありたいと考えています。感受性豊かな子どもたちの可能性を、ともに育んでいけることを楽しみにしています。