新卒3年以内の離職率は3割と言われていますが、実際には転職を迷う人はもっと多いと言います。そんな若手社会人のキャリアの悩みに寄り添うため、NPO団体キャリアフィルが2024年8月に設立されました。特徴は、完全オンラインで全国から相談を受け付け、何度でも無料で利用できること。「自分で判断できる軸を持つこと」を大切にした支援について、代表の長野さんにお話を伺いました。
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NPO団体キャリアフィルの概要
ー まずは、キャリアフィル様の事業概要について教えていただけますでしょうか。
長野さん:メインとしては、新卒3年以内の社会人の方を対象に、キャリアに悩んでいる方々へ気軽に相談できる場を提供するため活動しています。
全国どこにお住まいの方でも利用可能で、基本的にすべてオンラインで対応しています。相談時間は1回1時間を想定していますが、回数に制限はありません。1回で整理できない場合は、別の日に予約して継続的にご相談いただけます。
設立の経緯とミッション
ー NPO団体キャリアフィルを立ち上げられた経緯について教えていただけますでしょうか。
長野さん:私は元々教員をしており、現在は民間企業で働いているのですが、教育現場にいた経験から、大学までは学生のサポートができても、卒業後のキャリアについては十分なサポートができていないと感じていました。
社会人になってからのキャリア相談の場として、転職エージェントやキャリアコーチングなどの選択肢はありますが、転職エージェントはゴールが転職となることが多く、キャリアコーチングは費用が高額になりがちです。
そこで、NPOとして気軽に、中立的に、しかも無料でキャリア相談ができる場を作ることには社会的意義があるのではないかと考え、このサービスを立ち上げました。
新卒3年以内に特化する理由
ー 対象を新卒3年以内に定められている理由を教えていただけますでしょうか。
長野さん:新卒3年以内の離職率は3割と言われていますが、実際には離職には至っていないものの、転職を考えている人はもっと多いはずです。
特にこの時期は、人材流動性が高まっている現代において、大企業に入社したけれど本当にこのまま続けていいのかなど、様々な不安や迷いが生じやすい時期です。
指針もない中で最も悩みやすい時期だからこそ、この層に特化してサポートしていきたいと考えています。ただし、3年以上の方からご相談をいただいた場合もお受けしています。
キャリアフィルの特徴と強み
ー キャリアフィル様の強み、アピールポイントについて教えていただけますでしょうか。
長野さん:最大の強みは、気軽に相談できること、そして無料であることです。同じ社会人として相談に乗れるという点も特徴です。資格の有無を問われることもありますが、キャリアの悩みは誰もが経験することであり、その経験を共有しながら、気軽に、しかも無料で何度でも相談できる場を提供しているのが私たちの特徴です。
現在、ボランティアメンバーが12名ほどおり、バックオフィス業務を含めて運営しています。メインでキャリア相談の設計に携わっているのは私を含めた2名で、随時ボランティアメンバーを募集し、拡大を図っています。
キャリア支援に対する考え方
ー 相談者の方と接する際に意識されていることはありますか。
長野さん:私たちの基本的な考え方として、キャリアに正解はないと考えています。自分で判断したことが正解となります。不安を感じる理由は、自分がどう判断していいのか分からないからです。そのため、私たちは判断するための軸を整理するお手伝いをしています。
面談の流れとしては、まず悩みを言語化し、その日の問いを明確にします。その上で過去の職歴を整理し、自分の強みを可視化します。さらに、将来のキャリアについて、ワークライフバランスや年収、役職などの観点から目標を洗い出し、優先順位をつけていきます。そして、それらを踏まえた上で、明日からのアクションを決めていきます。
重要なのは、私たちは「教える」のではなく、相談者自身が整理し、判断できるようサポートすることです。
今後の展望
ー 今後の取り組みについて教えていただけますでしょうか。
長野さん:短期的には2つの軸があります。1つ目は、キャリア相談の質と量の向上です。ボランティアの方が誰でも一定の質を担保できるよう、相談の仕組みを汎用化すること、そしてSNSでの広報活動を通じて利用者数を増やすことを目指しています。
2つ目は、キャリアを考えるための情報提供です。現在、様々なビジネス書や情報源がありますが、それらは時として矛盾する内容を含んでいます。そこで、アカデミックな研究成果を一般の方々が使いやすい形でフレームワーク化し、提供していきたいと考えています。
メッセージ
ー 最後に、キャリアフィルの利用を検討されている方へメッセージをお願いします。
長野さん:キャリアに悩むことは当たり前のことです。また、キャリア相談で自分の情報を話すことに不安を感じる方もいらっしゃると思います。
そのため、私たちのホームページでは匿名でのご相談も受け付けています。出したくない情報は出さなくても構いません。
ぜひ気軽にご相談ください。なお、情報発信はX、Instagram、noteの3つのプラットフォームで行っています。