横浜市青葉区で20年にわたり、学校教育支援と社会教育活動を展開する「NPO法人あおば学校支援ネットワーク」。
子どもたちの学びと成長を支える、同法人の活動内容や大切にしている想いについて、理事長の竹本さんにお話を伺いました。
地域と学校を結ぶ架け橋として
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ー団体の概要と活動内容について教えてください。
竹本:当団体は平成17年に、PTA役員や民生委員、教員など、様々な立場の区民が集まって発足しました。
学校教育の支援と、地域での体験活動や世代間交流などの社会教育、この2つの分野での活動を進めてきました。より活動を充実させていくためのステップとして、令和2年にNPO法人化しました。
学校への支援としては、ボランティアの紹介や学校地域コーディネーターのサポート、キャリア教育プログラムの提案などを行っています。また、学校で困り感を抱える児童をサポートするボランティア養成も実施してきました。
地域での活動では、自然体験や防災キャンプ、おばけやしきの制作、工作実験など、多岐にわたるプログラムを展開しています。
特に地域での活動は、学校の枠を超えた子どもたちの交流の場となっています。インクルーシブ教育を念頭に、不登校の子どもや発達障害のある子ども、個別支援学級に在籍する子どもなど、誰でも参加できる場として開いています。
さらに、保護者向けの支援も行っており、来年度小学校に入学する年長児の保護者向け講演会や、地域で活動したい人向けの講座なども実施しています。子どもたちの成長には地域全体での支援が必要という考えに基づき、活動を行っています。
「わくわく」を大切にした体験型学習
ー貴団体独自の取り組みについて教えてください。
竹本:20年にわたって活動を続けてこられた要因として、「大人も子どもも、わくわく」というキーワードが挙げられます。私たちは教科書による学びではなく、体験を通じてその子なりの学びを得ることを大切にしています。
例えば、防災キャンプでは、水の備蓄量について教えるのではなく、実際に一晩を過ごす中で、自分がどれだけの水を必要としたかを体験的に学んでもらいます。
また、班対抗のゲームで学びを深めるなど、楽しみながら防災意識を高められるよう工夫しています。
おばけやしきづくりでは、子どもたち自身が企画から制作、運営まで携わり、その過程で様々な学びを得ています。この活動は毎年実施していますが、繰り返し参加する子も多いです。
キャンプなどは、時には募集人数の3〜4倍の応募があるほどの人気プログラムとなっています。
世代を超えた学びの循環と主体性を重視した活動
ー活動を通じて特に意識していることや方針などについて教えてください。
竹本:私たちの活動の特徴は、子どもと大人という線引きをせず、様々な世代が交流できる場を作っていることです。例えば、小学生として参加していた子どもが中学生になり、今度は教える側として参加するようになります。
そうして年々、自分の立場を変えながら参加を続ける子どもたちがいます。
20年という長い活動の中で、かつて手のかかった小学生が大学生となり、プログラム全体の進行を担当するようになるケースもあります。このように、次の世代へのバトンタッチが自然な形で行われているのも、私たちの活動の特徴です。
もう一つ大切にしているのが、子どもたちが「自分で選び、決める」という点です。大きな事故や怪我の防止は徹底しますが、失敗は成長のために必要だと考えています。
例えば、おばけやしきの大道具作りでは、子どもたちが設計図を描きます。時には「これは倒れてしまうだろう」と分かる設計でも、まずは子どもたちの考えを尊重し、実際に作ってみることを大切にしています。
失敗を経験することで「どうしたら良いのか」を考え、改良していく。そのプロセス自体が学びとなっているのです。
また、実際の活動では、様々な専門家も参加しています。教育関係者や保育士、看護師など、それぞれの専門性を活かしながら、子どもたちの活動をサポートしています。
今後の展望と地域への想い
ー今後、団体として強化していきたい部分や、新たに取り組みたいことを教えてください。
竹本:昨年度から南伊豆での海のキャンプを始めるなど、地元では体験できないプログラムを増やしています。今年度はスキーキャンプも予定しており、今後はさらにその領域を広げていきたいと考えています。
また、現在は定期的なイベントという形で場を提供していますが、将来的には「いつでも来られる居場所」を作ることを目指しています。子どもたちがふらっと立ち寄れる、常設の居場所づくりが今後の課題です。
ー最後に、記事をご覧になる方に向けたメッセージをお願いします。
竹本:私たちの活動に参加できる人は横浜市青葉区や近隣の市区にお住まいの方々に限定されてしまいますが、このような体験活動の機会が全国各地で増えていってほしいと願っています。
子どもたちの居場所は、一か所だけではなく、様々な場所にあることが理想だと考えています。私たちの活動が、そうした場づくりのヒントになれば幸いです。青葉区まで来られるところにお住まいの方は、ぜひ一度活動に参加していただければと思います。