子どもの権利条約に基づき、子どもの主体性を尊重した様々な文化活動を展開する、特定非営利活動法人子ども文化ステーション。
2005年の設立以来、子育て支援から子どもの社会参画まで、幅広い事業を通じて子どもたちの豊かな成長をサポートしています。今回は同法人の活動について、代表の武藤さんにお話を伺いました。
子どもたちの生きる力を育む、多彩な文化活動
ー団体の概要について教えてください。
武藤:私たちの法人は2005年に設立した特定非営利活動法人です。
「子どもに文化を、子どもに生きる力を」というミッションのもと、子どもたちの生きる力を大切にした文化事業を企画・運営することで、豊かに育つ地域社会作りを目指しています。
対象年齢は子育て支援事業では0歳児から、子どもの社会参画事業では中学生・高校生まで含まれ、年間20近い事業を実施しています。
それぞれの事業では、子どもたちの主体性を最大限に尊重し、プロフェッショナルな関係者との連携を通じて、質の高い体験の機会を提供しています。
現場での子どもたちとの関わりを大切にした活動へ
ー活動を始めたきっかけについて教えてください。
武藤:私自身、学生時代に子どもに関わるNPO活動に参加していた経験がありました。大学卒業後は大手の自動車会社のエンジニアとして勤務していましたが、学生時代に関わった子どものNPO分野で仕事をしたいと考え、この世界に飛び込みました。
前職では全国ネットの子どもNPOの事務局長まで務めていましたが、資金繰りや活動の企画作り、交渉事などが多く、大事な仕事でしたが子どもたちとの活動を実感できる機会が少なくなったため、より具体的な活動の現場を作る仕事に戻りたいと考え2005年に本法人を立ち上げました。
現場での活動を通じて、子どもたちが持つ無限の可能性を目の当たりにし、その可能性を最大限に引き出せる環境づくりの重要性を実感しています。
子どもの権利を尊重した6つの柱による事業展開
ー具体的な活動内容について教えてください。
武藤:私たちの活動は、子どもの権利条約第31条に基づき、子どもたちの遊ぶ権利や芸術文化に参加する権利を重視しています。
活動の核となる方針として、「子どもの主体性を大切にする」「大人の都合でやらない」「本物の体験の場を提供する」という3つのポイントを掲げています。
事業は6つの柱で構成されています。1つ目は子育て支援で、さいたま市の子育て支援センターの運営などを行っています。施設は土日を含めて毎日開館し、地域福祉の拠点として子育て家庭に寄り添った支援を提供しています。
2つ目は子どもの芸術文化体験として、「シアタースタート」という生まれて間もない子どもを対象とした舞台芸術体験を提供しています。
この事業の特徴は福祉の施策として企画していることで、17年間で500ステージ以上を実施し、被災地や小児医療センター、病院などで公演も行っています。
3つ目は子どもの異文化交流として、中国内モンゴルの幼稚園との交流や、子ども植林を実施しています。
4つ目は子どもの社会参画事業として、「子どもがつくるまちミニさいたま」の運営や、5月5日には東京の代々木公園でこども家庭庁の後援を得て、「子ども体験交流フェスティバル」を開催しています。
5つ目は子どもと高齢者の交流として、高齢者の擬似体験や認知症を学ぶ事業を展開しています。
6つ目は情報発信・ネットワークとして、行政や企業、他のNPOとの協働など、子どもたちの体験活動の普及啓発にも力を入れています。
子どもたちの無限の可能性を引き出す独自の取り組み
ー貴法人ならではの特徴的な取り組みについて教えてください。
武藤:子どもたちの主体性を大切にした最も特徴的な事業は「子どもがつくるまちミニさいたま」です。これは事前準備から当日の運営まで、すべて子どもたちだけで企画を進めていきます。
当日は1,000人近い子どもたちが参加し、市役所、ハローワーク、銀行、ネイルサロンなど、様々な店舗や施設を子どもたちが運営します。会場内には保護者や先生は入れず、子どもたちだけでまちを作り上げていくという、非常にユニークな取り組みです。
この中では、子どもたちが自分で仕事を選び、稼いだお金を自由に使える環境をつくることによって、自分で判断し行動する力を発揮していきます。
事前の企画から参加する子どもスタッフも、指示を待つのではなく自分で企画することによって、驚くほど主体的に変化していきます。
また、「シアタースタート」事業では、生まれて間もない子どもたちにも舞台芸術を楽しめる環境を提供しています。小さな子どもは舞台を見ることができないという大人の固定観念を超えて、乳幼児でも舞台芸術を体験できる機会を創出しています。
この取り組みは被災地支援の一環としても実施しており、震災後の地域コミュニティの再生にも貢献しています。また、病院でも実施しており、子どもたちに病気とたたかう勇気を届けています。
子どもたちの新たな可能性を開く場所に
ー子どもたちと接する際に特に意識していることはありますか?
武藤:子どもたちは社会の中で、親や先生などからの様々な期待を背負っており、ある意味で管理された環境の中で生活しています。
私たちの活動では、そうした日常から少し解放され、子どもたち一人ひとりの中にある新しい可能性が芽生える場所を提供したいと考えています。
私たちは先生や親という立場ではなく、子どもたちと対等の立場で関わることを大切にしており、それによって子どもたちの様々な可能性が発揮されていくことを実感しています。
ー今後、さらに強化していきたいことはありますか?
武藤:今後はこれまで築いてきた行政や企業、他のNPOとのネットワークを活かしながら、活動をさらに広げていきたいと考えています。
特に「シアタースタート」事業については、被災地や病院での公演実績も活かし、心のケアの事業としてより多くの地域で展開していきたいと思います。
また、「子どもがつくるまちミニさいたま」では、活動の中で育ってきた中学生、高校生、大学生のスタッフのネットワークを広げ、事業や社会の中で活躍できる場を作っていきます。
ー最後に、記事を読む方へメッセージをお願いします。
武藤:私たちのNPOの活動だけでは限界はありますが、子どもたちには限りない可能性があると信じています。
日常の家庭生活や学校生活も大切ですが、それだけでは見えてこない子どもたちの可能性を広げるため、これからも様々な活動の場を提供していきたいと考えています。