初心者専門の絵画教室が描く、人生を彩るアートの時間
絵を描くことは、決して子どもだけの特権ではありません。
「昔は好きだったけれど、苦手意識から描かなくなった」「もう一度挑戦したいけれど不安」──そんな大人の方々に向けて、絵の楽しさと可能性を改めて伝えてくれる場所があります。
今回は、初心者専門の絵画教室を運営する画家 寺本和純さんに、立ち上げの背景やレッスンに込めた思い、そして教室の魅力をじっくり伺いました。
大人のための、もう一度絵を楽しめる場所を
「当教室は大人専門の絵画教室です」と話すのは、現役のプロとして作家活動も行う主宰の画家 寺本和純さん。
全国で個展を開催する中、ファンや来場者から絵のアドバイスを求められることが多く、その都度丁寧に伝えていたといいます。
すると、翌年には上達した姿を見せに来てくれる方が増え、「描けるようになった」「もっと描きたい」「先生の言葉は魔法みたいね」という声が集まり始めたそうです。
その経験がきっかけとなり、「もっと体系的にサポートできたら」との想いで始まったのがこの教室。
対象は、美大やプロを目指す方ではなく、「絵が好きだけど、苦手意識がある」「うまく描けるようになりたい」という、一般の大人の方々です。
月1〜2回、初心者に寄り添う少人数制の教室
教室は月1〜2回のペースで開催され、通いやすさも意識されています。
生徒の多くは、子どもの頃に絵を描いていたけれど途中でやめてしまった方や、「絵に憧れはあるけれど、自分には難しそう」と感じていた方々。
特徴的なのは、その自由度の高さ。課題は設けず、生徒一人ひとりの「こう描きたい」に合わせたアプローチで指導が行われます。
写実的に描きたい方、印象派のようにふわっと仕上げたい方、あるいはイラスト風にしたい方まで、スタイルに制限はありません。
また、使用できる画材も自由です。アクリル、水彩、色鉛筆、鉛筆デッサンなど、自分が使いやすいものから始められま(※日本画、油絵は除く)。
少人数制で運営されており、寺本さんが一人ひとりに丁寧に向き合える環境も好評です。
必ず「褒めて伸ばす」──自信を取り戻すために
この教室の大きな特徴は「褒めて伸ばす」ことを徹底している点です。
寺本さんは言います。「苦手意識がある方って、ほんの少しできないだけで“全部できない”と思ってしまう。でも、そんなことはありません」
例えば、形を取るのが難しくても、色使いが絶妙な方、配色センスが抜群な方も多くいます。
そうした隠れた長所を見つけ、具体的に言葉にして伝えることで、少しずつ自信を取り戻していけるような指導を心がけているそうです。
「生徒さんの表情がパッと明るくなる瞬間があるんです。“あ、私、意外と描けるかも”って気づいてくれた時。その変化を見るのが、何より嬉しいんですよね」
目に見える成長が、生きがいにもなる
教室では、スケッチブックを1冊用意してもらうところから始まります。
最初のページには、まだ線がぎこちない絵が並びますが、回を重ねていくうちに筆づかいが洗練され、構図も安定し、色使いに深みが増していく。
最後のページを見れば、誰が見ても成長がわかるレベルで上達しているのだそうです。
ある生徒さんは「孫に見せたらすごく喜んでもらえた」と目を輝かせながら話してくれたといいます。
その姿に、講師自身も教室を続けることの意味と喜びを強く実感しているとのこと。
年齢を重ねたからこそ味わえる感性ってあると思うんです。皆さんの作品には、そうした人生の深みがにじみ出ていて、私自身も刺激をもらっています。
今後は発表の場をもっと広げていきたい
将来的には、生徒たちによる展示会や合同発表会なども視野に入れているとのこと。
「これまでは、描いた作品をご家族に見せて喜んでもらうという形が多かったんですが、今後はもっと外部の方に向けても発信していきたいですね」と語ります。
絵を描く喜びに加え、それを「誰かに見てもらう」「反応をもらう」といった体験は、より深い達成感や感動につながります。
「自己完結型の趣味にとどめず、感動を分かち合う場を作りたい」──そんな展望が、教室の次なるステージを予感させてくれました。
最後に──年齢を言い訳にしないでほしい
年齢を重ねると、“新しいことを始めるのは遅いんじゃないか”と感じる方もいます。でも、私は声を大にして言いたい。始めるのに遅すぎるなんてことはないんです。
もちろん、若いころに比べて覚えるスピードが落ちることもあるかもしれません。でも、それ以上に得られるものがある。
絵と向き合う静かな時間、完成した時の達成感、そして誰かに「素敵だね」と言ってもらえる幸せ──それは、すべての大人が持つべき贅沢な時間です。
ぜひ、気軽に教室をのぞいてみてください。“やってみたい”という気持ちがあるなら、それはもう十分な才能ですから。