海外の方に、漢字と書の魅力を。日本文化を伝える出張書道体験

calligraphy shodo Nakano」の吉村先生に、日本文化の楽しみ方を伺いました

観光や短期滞在で訪れる外国人の方、または日本に住む海外出身の方にとって、日本文化に触れる機会は旅や暮らしを豊かにしてくれます。

中でも“書道”は、筆を使って文字を書くという体験を通じて、日本独自の美意識や精神性を感じられる特別な文化体験です。

「書道東京カリグラフィー書道中野」は、そうした外国人の方に向けて、日本文化の入り口としての書道体験を提供しています。

今回は、講師を務める吉村先生に、この活動を始めたきっかけや、レッスンの内容、海外の方との印象深いエピソードなどについて伺いました。


対象は国籍・年齢を問わず。観光客も在住者も歓迎

この書道体験サービスの大きな特徴は、「対象を限定しないこと」です。

日本に滞在中の観光客の方はもちろん、日本に住む外国人の方やそのご家族、年齢も問わず子どもから大人まで幅広く受け入れています。

「海外の方にとって、日本の文化って本当にたくさんあると思うんです。着物やお茶、お花もあれば、マンガやアニメだって立派な文化。

でも、その中でも“漢字を書く”という体験は、特別な興味を持たれることが多いんですよね」と吉村先生は語ります。

実際にレッスンには、日本語を全く話せない方もいらっしゃいますが、身振り手振りや簡単な英語、さらには筆を動かしながらの説明で、言葉の壁を超えた体験が成立しているそうです。


決まった教室は持たず、お客様の旅程に合わせて会場を設定

「書道東京カリグラフィー書道中野」は、固定の教室を持っていません。代わりに、お客様が滞在しているホテルや民泊施設の近くのレンタルスペースなどを確保し、旅程や希望に合わせて場所と時間を調整しています。

特に観光で来ている方は、日程がとてもタイトです。限られた時間の中で、移動負担なく書道を体験してもらえるよう、なるべくご希望に沿った場所を確保するようにしています。

今後は中野や新宿など、交通の便がよくアクセスしやすい場所に常設スペースを持つことも検討中とのことですが、現時点では出張形式をメインに活動されています。


書道の魅力を超えて、心に残る“日本文化体験”へ

ただ文字を書くだけでなく、体験そのものを「日本文化との出会い」として深めていけるように、さまざまな工夫が凝らされています。

たとえば、「自分の名前を漢字にして書く」という体験。これは特に好評で、英語名を漢字に翻訳し、意味や成り立ちも説明しながら体験していただくそうです。

漢字をただ書くだけでなく、その背景や意味を知ってもらうことで、日本語や日本文化への理解が深まります。“自分の名前がこんな風に表現できるんだ!”という驚きや感動があるんです。

さらには、自分で書いた文字をその場でシール(タトゥー風)にしてプレゼントするサービスや、掛け軸に仕立てて「旅の記念品」として持ち帰ってもらうといった工夫も。

せっかくの体験だからこそ、何か形として持って帰ってもらえるようにしています。掛け軸を広げた時、日本での思い出がよみがえるような、そんな一枚になれば嬉しいです。


初めての方にも丁寧に。失敗のない安心設計

体験者の多くは、書道どころか筆を持つのも初めてという方が大半です。そのため、筆の持ち方や墨の使い方など、最初のステップから丁寧にレクチャーしています。

“きれいに書くこと”が目的ではないので、失敗してもいいんです。とにかく自由に、楽しく体験してもらうことを大事にしています。

紙もたっぷり用意されており、「いくらでも書いてOKです!」というスタンス。枚数や時間に制限をかけず、満足するまで何度でも筆を動かせる空間が整っています。


忘れられないひとときを支えた、あたたかな交流

これまでの中で印象に残っているエピソードを伺うと、吉村先生はこんな出来事を教えてくれました。

「5人家族で参加された外国人のお客様がいらっしゃったんですが、予定より15~20分ほど遅れて到着されたんです。

でも、私はずっと待っていて、到着したときに“時間を過ぎても待っていてくれてありがとう”って言ってくださって。

後日、口コミでも“とても親切で柔軟な先生だった”と書いてくださっていたのが、とても嬉しかったですね。

自身にとっては「当然の対応」だったことでも、異国の地で慣れない旅をしている方にとっては、そんな心配りが大きな安心感につながっていたのかもしれません。


着物と町歩き、書道とコラボ。新たな文化体験を模索中

今後の展望については、書道だけに留まらない“複合的な日本文化体験”の構想があるそうです。

着物も文化の一つとして大事にしていて、書道と組み合わせたプランも考えています。例えば、着物を着て中野の街を歩き、その後に書道体験をして、最後に記念写真を撮ってもらうようなツアーです。

中野には、古くからの神社や自然豊かな公園など、日本の風景を味わえるスポットがたくさんあります。

そうした場所を活かしながら、観光と文化体験を融合させたオリジナルツアーの実現に向けて準備を進めているとのことです。


自由なスタイルで、心に残る日本文化を

最後に、吉村先生からこの記事を読んでくださった方へのメッセージをいただきました。

体験されたい内容や、時間、場所などはすべて柔軟に対応しています。“これがやりたい”という思いがあれば、できる限り実現したいと考えていますので、まずはお気軽にご相談ください。

書道は静かに文字を書く中で、自分自身と向き合える時間でもあります。文化を学ぶだけでなく、心を落ち着かせるひとときとしても、海外の方から評価されているこのサービス。

東京での滞在が、より思い出深いものになるように──そんな願いが込められた、あたたかな出張書道体験でした。