現代の家庭はとにかく忙しい。子どもも親もスケジュールに追われる毎日で、「習い事をさせたいけれど時間が取れない」と悩む方も多いのではないでしょうか。
そんな声に応えるのが、東京都中野区を拠点に活動する「玄美こども書道教室」です。
この教室は、決まった場所に通うのではなく、講師がご家庭に直接出向く“出張型”の書道教室。時間や場所に縛られず、子どものペースに合わせて学べる柔軟なスタイルが好評を呼んでいます。
今回は、教室を主宰する吉村先生に、このスタイルを選んだ背景やレッスンの工夫、印象に残るエピソード、そして今後の展望について、たっぷりとお話を伺いました。
忙しい毎日でも無理なく学べる。家庭の都合に寄り添う出張型レッスン
玄美こども書道教室は、未就学児から小学生、中学生までの幅広い年代を対象に、自宅での書道レッスンを提供しています。
私自身は、教室を構えて生徒さんを迎えるのではなく、保護者の方のご自宅へ道具一式を持って伺い、レッスンを行うスタイルを取っています。
この形にこだわる理由は、私自身が子育てをしている母親だからです。日々の生活の中で、「決まった時間に子どもを連れてどこかへ行く」ということがどれだけ大変か、痛いほど理解しています。
兄弟の予定、親の仕事、家庭の用事——それらを調整して、さらに習い事の送り迎えをするというのは、本当に負担が大きいものです。
この教室では、そんな保護者の方の負担を少しでも軽くしたいと思い、ご自宅に伺うスタイルを採用しています。
時間は完全にご相談制で、週末や平日の夕方など、ご都合に合わせて調整しています。書道道具もすべて持参するため、特別な準備は不要です。
「体験レッスンはいつですか?」というご質問にも、柔軟に対応
よく「体験教室はいつですか?」というお問い合わせをいただきますが、この教室では特定の日程を設けていません。「ご都合の良い日をお知らせください」とお伝えし、そこから相談して日時を決めていきます。
また、料金形態は1回ごとの設定になっており、月謝制ではありません。月に1回だけ受講されるご家庭もいれば、「長期休みの時に集中してお願いしたい」という方もいらっしゃいます。
月ごとに予定が変わっても問題なく、ご家庭のリズムに合わせて自由に通っていただけます。
子どもにとって「書くことは楽しい」時間にしたい
この教室で私自身が最も大切にしているのは、子どもたちに「書くことって楽しい!」と思ってもらうことです。
もちろん、書道は字を美しく書くための技術や姿勢を身につける場でもありますが、それ以上に、まずは「楽しい体験」であることが重要だと思っています。
毎月、課題は用意しています。ただ、課題ばかりだと子どもたちはどうしても飽きてしまうことがあります。そこで、課題を一通り終えたら、「今日は自分の名前を書いてみようか」「好きな言葉を書いてみたい?」といった提案をして、自由に取り組んでもらうようにしています。
また、小さな成功体験を重ねることで自信につながるよう、どんなに些細なことでもたくさん褒めて、気持ちを引き出すように心がけています。
「書道だけじゃない」——信頼関係が生んだ新たな役割
生徒さんとの関わりの中で、今でも強く印象に残っている出来事があります。それは、ある保護者様から「今日、書道の前の習い事のお迎えに間に合わないので、代わりに行ってもらえませんか?」とお願いされたことでした。
そのご家庭では、私が伺う前に別の習い事に通っているお子さんがいて、そこから帰宅してから書道のレッスンが始まるという流れでした。しかしその日は、お仕事の都合でどうしても保護者様が迎えに行けなかったそうです。
「分かりました。私が迎えに行きます」とお引き受けし、習い事の教室まで迎えに行って一緒にご自宅に戻り、そのまま書道のレッスンを行いました。そのとき、「本当に助かりました」と感謝していただけたことが、私にとってもとても嬉しかったです。
この出来事は、私自身が「保護者の負担を減らしたい」という思いで始めた教室が、まさにその役割を果たせた瞬間だったと感じています。
+αのサポートにも応えられる教室でありたい
この教室では、書道だけでなく、その前後の時間やニーズにも応えられるような存在でありたいと考えています。実際に、「レッスンの後に宿題も見てほしい」というご要望をいただくことも増えてきました。
私自身は、子どもたちの学びに寄り添うことが好きですし、書道の枠を超えて「安心して頼れる存在」としてお手伝いできることがあれば、積極的に関わっていきたいと考えています。
今後は、こうした「+αのサポート」が可能であることを、もっと明確に伝えていくことも必要だと感じています。「こんなこともお願いしていいのかな?」という声にも、「大丈夫ですよ」と応えられる教室でありたいです。
書道を通して、忙しい毎日に「整う時間」を届けたい
習い事というと、どうしても「時間がないから無理」「送り迎えが難しいから」と諦めてしまう方も多いのではないかと思います。けれど、そういったご家庭にこそ、書道のような“集中と静けさ”の時間が大切だと感じています。
自宅で、リラックスしながら、筆を動かす時間は、子どもにとってはもちろん、大人にとっても「心が整う時間」になるのではないでしょうか。忙しい日々の中に、少しでも“余白”のような時間を届けられたら、それが私にとって何よりのやりがいです。
まずは気軽に体験から。家庭に合わせた学びを一緒に考えていきたい
今後も、「書道をやってみたいけれど、通うのは難しい」と感じている方に、安心して始めていただけるような教室でありたいと思っています。まずは、体験レッスンからでも構いません。
お子さんの性格やご家庭のライフスタイルを伺いながら、無理なく続けられるスタイルを一緒に考えていけたらと思っています。
「やってみたい」「書いてみたい」という小さな気持ちを大切に育てていけるように、これからも一人ひとりに丁寧に寄り添ってまいります。