「ピアノの練習をしなさい!」という親の声かけだけでは、子どもがピアノを継続するのは難しい時代。共働き家庭の増加や多様な習い事の選択肢がある現代において、ピアノ教室にも新しいアプローチが求められています。そんな中、神奈川県相模原市で140名もの生徒を抱えるYoshimiピアノ教室は「ピアノ大好きで自ら練習する子に育てる」をモットーに、他校で挫折した子どもたちも長く続けられる環境づくりに成功しています。代表の岡田好美氏は、3歳からピアノを始め、音大出身ではないという自らのコンプレックスを乗り越え、チャイルドコーチングの資格も取得。子どものやる気を引き出す声掛けと練習の習慣化をサポートする独自の指導法で、音楽の素晴らしさを伝え続けています。今回のインタビューでは、岡田氏がどのようにしてピアノ教室を成功に導き、子どもたちのピアノへの情熱を育んでいるのかに迫ります。

FUGA国際音楽コンクール、ピアノ専攻学生・一般部門本選において金賞受賞。及川音楽事務所オーディション、作曲部門合格。その他多数入賞。2010年のCDアルバム「Traveling」3曲レコーディング。2012年「発表会で弾きたいピアノ曲集」をいずれもTIAA(東京国際芸術協会)よりリリース。2020年オリジナルピアノ作品集「やすらぎ」をBeltaレコードよりリリース。
現在は後進の指導のほか、及川音楽事務所や東京国際芸術協会主催のクラシックコンサート等に出演する他、レストラン・病院でのBGM演奏等、幅広いジャンルで演奏活動をしている。及川音楽事務所所属。東京国際芸術協会会員。
年齢に関係なく音楽を学べるピアノ教室

ー岡田さま、本日はどうぞよろしくお願いいたします!まずは『Yoshimiピアノ教室』ではどういった方を対象に、どのような指導を行っているのか、概要を教えていただけますか?
岡田好美代表(以下敬称略):現在、自宅を第1教室として、もう1つ別の場所に第2教室を持ち、2つのピアノ教室を経営しています。生徒さんの約8割は小学生までのお子様ですが、中学生の生徒さんもいますし、大人の方も受け入れています。実は一番高齢の方は96歳の方もいらっしゃるんです。
基本的にはピアノ教室ですが、声楽の先生も1人在籍しており、声楽も教えています。子どもが多く通う教室ではありますが、年齢に関係なく、どなたでも受け入れている教室です。
「背水の陣」から140名の大規模教室へ — ピアノへの情熱が実を結ぶまで
ー岡田さまが、こちらのピアノ教室を立ち上げた経緯やきっかけについて、お聞かせいただけますか?
岡田:元々私は3歳の時からピアノを始めていて、それなりに専門的な教育は受けていたのですが、進学は普通の一般大学を選びました。社会人として銀行に勤めていましたが、結婚して子どもが生まれた時に、昔から本当はピアノの先生になりたかったという思いと、子どもが大好きということ、そして家でできる仕事を探していたことがきっかけとなりました。
当初はピアノ1本で生計を立てていくことができませんでしたし、音大を出ていないというコンプレックスもありました。それで音大生と同じ舞台でコンクールに出て実績を作ろうと決意しました。実はその頃は生活のために、同時に英語教室も運営していたんです。少しずつピアノの生徒さんが集まってきたところで、ようやくピアノ教室だけで生活していけるようになりました。
おかげさまで口コミが絶えないピアノ教室に成長し、1人では対応しきれないほど生徒さんが増え、ご兄弟の受け入れもできないほど問い合わせやご紹介をいただくようになりました。お断りするのが心苦しいと感じた時に、もう1つ教室を持とうと決めたんです。現在は2つの教室で約140名の生徒さんがおり、4名の講師の方に協力していただいています。もう1つの教室も今ではほぼ満員の状態です。
ー岡田さんがYouTubeで自分の半生を話されていた内容を拝見しました。さらっとお話されていましたが、実績づくりのためにされた努力はとんでもないものだったのではないですか?
岡田:とんでもない努力をしたと思います(笑)。今の自分では、もうできないほどですね。30代の頃は、全てをピアノに捧げるくらいの気持ちでした。会社を辞めてしまったので、もう背水の陣というか、成功するしかないという状況で全てをそこに注ぎ込みました。
「チャイルドコーチング」で実現!忙しい親をサポートする練習習慣化メソッド

ーたくさんピアノ教室はありますが、他にはない『Yoshimiピアノ教室』ならではのアピールポイントを教えてください。
岡田:ピアノは教室に通うだけでは上達が難しく、家での日々の練習が欠かせません。この練習を習慣化させることが最大の課題なのですが、現代ではお母様方も社会で活躍されていて、昔のように親が付き添って練習を見守るというのが難しくなっています。お子様が一人で自主的に練習するのも容易ではなく、「練習しないのであればピアノ教室は無駄遣いだから辞めさせたい」という声も少なくありません。
しかし、練習の習慣化をサポートできるかどうかで、子どもの成長は大きく変わってきます。子どもは無限の可能性を秘めていますが、その習慣化をきちんとサポートしなければ、せっかくの才能を開花させることができないと痛感したんです。そこで私はチャイルドコーチングの資格を取得しました。
このコーチング技術を活用して生徒さんの練習習慣化をサポートし、同時に親御さんの悩みにも耳を傾け、忙しいお母様の負担にならないようにサポートしています。ただし、何より大切なのはピアノを好きでいてもらうこと。音楽を愛する気持ちを育てながら、練習の習慣化をサポートするという姿勢で、忙しい保護者の方と二人三脚で取り組んでいます。このアプローチのおかげで、ほとんどの生徒さんが自ら進んで練習する子に育っています。
他の教室と比べて、この練習習慣化のサポートが特に手厚いのが私たちの特徴だと自負しています。
ーチャイルドコーチングの資格とは、具体的にはどのようなものなのでしょうか?
岡田:チャイルドコーチングは、会話を通じて子どものやる気を引き出す技術です。声掛けの方法一つでやる気を引き出せるかどうかが大きく変わってきます。例えば、生徒さんがマイナス思考に陥っている時に、ポジティブな考え方へと導き、「自分にはできる」という自己肯定感を育むような言葉がけを心がけています。レッスンの中で最も大切にしているのは、お子様自身が「ピアノをやりたい」「新しい曲に挑戦してみたい」という内発的な動機を育むことなんです。
「怖い先生」から「音楽の楽しさを伝える先生」へ — 指導法の大転換

ー生徒さんに指導する際に、特に意識していることや、スタッフの方々と共有している方針などがあれば教えてください。
岡田:私たちのキャッチコピーは『ピアノ大好きで、自ら練習する子に育てます!』です。私自身はコーチングを学んでいますが、他の講師陣はまだコーチングを専門的に学んでいません。そこで月に2回ほど講師会を開催し、私が学んできたことを全て共有して、講師全員が同じような効果的な声掛けや保護者対応ができるよう、継続的に研修を行っています。
子どもたちへの指導で最も重視しているのは、まず音楽を好きになってもらうことです。昔の私たち世代では、ピアノの先生は怖い存在だったんです。当時は手を叩かれるなど厳しい指導が当たり前でしたが、今はそうした方法は通用しませんし、教育的な意味もないと考えています。
子どもたちがピアノを好きになり、主体性を育むことが何より大切です。クラシック音楽を体系的に学ぶ指導をベースにしていますが、子どもたちや保護者の方々にとって「クラシック音楽」と言われても、すぐには馴染みにくいものです。そこで、子どもたちが弾きたい曲も積極的に取り入れながら、現代の子どもたちの興味にも応えつつ、段階的に技術を上達させる指導をしています。同時に、クラシック音楽の素晴らしさも伝えていきます。
音楽を好きになることが第一ですが、ピアノが弾けるようになれば自然と好きになるという側面もあります。弾けることの楽しさを実感できれば、さらに練習したくなるものです。そのためには練習の習慣化が必要ですし、何より「自分が弾ける」という成功体験を積み重ねることが大切だと考えています。
ー岡田さまは、指導者としての知識やスキルはどのように身につけられたのですか?
岡田:私が子どもの頃に通っていたピアノ教室は、音大進学やコンクールを目指すような本格的な教室だったので、演奏技術だけでなく音楽理論などの座学もしっかり学んでいました。ただ、知識は時間とともに忘れてしまうものなので、ピアノ教室を開く際に改めて勉強し直しました。現在も作曲やソルフェージュ(楽譜を読むことを中心とした基礎訓練)のレッスンを継続的に受講していて、常に自己研鑽を続けています。生徒さんに追い越されないよう、教える側も学び続けることが大切だと思っています。
言葉以上の表現を可能にする — ピアノが人生に与える無限の恵み

ーホームページを拝見した時に‟ピアノを習って得られるもの”という素敵な内容がありました。「毎日こつこつ練習する力、努力する力が自然と身に付きます」「言葉で表せない気持ちをピアノで表現することが可能になる」「ピアノは心を成長させてくれる」とありましたが、改めてピアノから得られるものについてお聞かせいただけますか?
岡田:大げさに聞こえるかもしれませんが、私はピアノを通じて全てを教えてもらったと思っています。ピアノのレッスンや日々の練習を通じて、努力して積み重ねることで得られるものは本当に大きいです。私は3歳から毎日練習を積み重ねてきて、今では自由にピアノを弾くことができます。
人生には嬉しい時も辛い時も悲しい時もあります。振り返ると、嬉しい時もピアノを弾きたくなりますし、辛い時や悲しい時にもピアノがあることで乗り越えられた経験を何度もしてきました。
ピアノは常に側にいてくれる存在です。単なる音ではなく、自分で奏でる音、自分で表現する音が時に心の答えをくれることもあります。抽象的な表現になりますが、ピアノは私に全てを与えてくれ、彩りをもたらしてくれました。誰にも相談できないことも、ピアノを弾くことで答えが見つかることがあります。生徒さんたちにもそこまで感じてもらえるように成長してほしいと思っています。
趣味からコンクール入賞まで — 目標に合わせた2つのコース展開

ー提供しているコースやプランについて簡単に説明していただけますか?
岡田:弊教室では、生徒さんの目的や年齢に合わせて、きめ細かくコース設計をしています。大きく分けて「大人のコース」と「子どものコース」があります。
「大人向けのコース」では、ご自身が弾きたい曲を中心にレッスンを進めるスタイルを採用しています。「昔挫折したけれど、もう一度チャレンジしたい」「定年後の趣味として始めたい」など、さまざまな動機を持つ生徒さんがいらっしゃいますので、それぞれの目標や生活リズムに合わせたカリキュラムをご提案しています。特に高齢の方には、指の運動や脳トレとしての側面も意識したレッスン内容にしています。
子どものコースは「スタンダードコース」と「アドバンスコース」の2つに分かれています。スタンダードコースは音楽を楽しみながら、生活の一部としてピアノを続けていきたいお子様向けです。基礎をしっかり身につけながらも、好きな曲にも挑戦できる柔軟なカリキュラムになっています。
一方、アドバンスコースは将来音大への進学を視野に入れている、あるいはコンクールでの入賞を目指すお子様向けの本格的なコースです。より専門的なテクニックや音楽理論の習得、表現力の向上に重点を置いています。もちろん、途中でコースを変更することも可能ですので、お子様の成長や興味の変化に合わせて柔軟に対応しています。
どのコースも、先ほどお話したチャイルドコーチングの手法を取り入れた練習習慣づけのサポートを行っていますので、無理なく継続していただけることが『Yoshimiピアノ教室』の最大の強みです。
音楽の灯を絶やさない — 地域全体の音楽文化を育てる取り組み

ー今後、どのような点をより強化していきたい、あるいは新たに取り組んでいきたいとお考えですか?
岡田:近年、音楽業界は少子化の影響を強く受けていますし、子どもたちの習い事の選択肢も大幅に増えています。かつては女の子の習い事といえばピアノが定番で、ピアノの先生は憧れの職業でしたが、現代ではコストパフォーマンスやタイムパフォーマンスが重視される傾向にあります。ピアノは短期間で簡単に習得できるものではありませんし、音大に進学しても将来の収入面に不安があるという現実もあり、一部の音楽大学は閉鎖を余儀なくされるケースも出てきています。
そうした状況の中でも、私は音楽の素晴らしさを社会に広め、復活させたいという強い思いを持っています。音楽には人の心を潤し、人生に彩りを与える力があるからです。必ずしも音大進学を目指してほしいというわけではなく、音楽を楽しむ生徒さんを育てながらも、本気で音楽と向き合い、「音楽って素晴らしい」「将来は音楽の先生になりたい」と思う方々も多く輩出したいと考えています。
この思いを形にするために、具体的な取り組みも進めています。芸大を目指す生徒さんには専門的な作曲の先生を紹介したり、日本音楽協会の相模原ブランチマネージャーとして地域全体の音楽活性化に取り組んでいます。音楽検定やコンクールの主催、地域のピアノ教室の先生方向けのセミナー開催など、教える側のモチベーション向上にも力を入れています。
さらに、今年(2025年)の12月にはボランティアで、弊教室の生徒さんだけでなく地域の方々も広く参加できるクリスマス音楽会を企画しています。こうした活動を通じて、より多くの方に「音楽っていいな」と感じていただける機会を創出していきたいと考えています。
「音楽の旅」への新たな出発

ーこのインタビュー記事を見て、『Yoshimiピアノ教室』に興味を持った方へのメッセージをお願いします!
岡田:おかげさまで現在はほぼ定員に達していますが、第2教室では若干の空きがあります。また新しい講師も募集中ですので、受け入れ態勢が整い次第、さらに門戸を広げていく予定です。
弊教室の最大の特徴は、「ピアノを好きになる」ことと「自ら練習する習慣を身につける」ことの両立です。音楽の素晴らしさを伝えることに情熱を注ぐ講師陣が、一人ひとりの生徒さんに寄り添いながら指導しています。特に他の教室ではなかなか実現できない「練習の習慣化のサポート」には自信を持っています。
ピアノを通じて得られる喜びは一生の宝物になります。単なるスキルだけでなく、音楽を通して人生をより豊かに、より深く感じる力を育んでいきませんか?どんな年齢の方でも、初めての方でも、以前挫折した経験がある方でも大歓迎です。ぜひ一緒に、素晴らしい音楽の旅に出かけましょう!