子どもの自発性を大切に-アートセラピーを通じた心の成長「こどものアトリエほびきぶね」

子どもたちが自由に創作活動を楽しみながら、心の成長を育む「こどものアトリエほびきぶね」。

美術教育ではなく、アートセラピーを目的としたアプローチで、子どもたちの自発性と楽しむ心を尊重しています。

今回は、そんなこどものアトリエほびきぶねの活動について、林綾乃さんにお話を伺いました。

子ども一人ひとりの自由な創作を支えるアートセラピー

ー まずどういった方を対象にどのようなレッスンをされていらっしゃるのかお伺いできますか?

4歳以上の幼児クラスと、小学生以上を対象としたクラスの2コマを用意しています。

ー どういった内容を教えていらっしゃいますか?

林さん:教えるというよりはアートセラピーを目的にしているので、色々な画材、絵の具や粘土、木片などを用意していて、一人ひとりがその日何に取り組みたいかなというところから見ていく、そういった教室です。

こちらからテーマを用意することもないですし、子供たちが発するものを受けて、今伸ばしている能力や心の動きなどを見ていきます。

アート療法との出会いが生み出した新しい子どもの居場所

ー ご自身がこの教室を始められたきっかけだったり、背景についてお伺いできますか?

林さん:きっかけは、アート療法という分野に出会ったことです。

学生時代に美術を習っていたので、イベントでデッサン教室を開いた時に、子供達が喜ぶ様子もありつつ、でも教えるって、この時期からデッサンとかザ・美術というものを教えるのはどうなんだろうと思ったんです。

そんな折にアート療法の分野を学ぶタイミングがあったので、ここがリンクしたというか、技術を教えるというよりも、もっと子供たちが発するものを見てみたいという好奇心の方が勝りました。

その気持ちと、アート療法という手法が合致しました。

子どもたちのありのままを受け止める場所

ー この活動をされる中で大切にされていらっしゃることや、特に意識してらっしゃることはなんですか?

子どもたちは学校生活や家庭生活を過ごしていく中で頑張れる時と頑張れない時があって、頑張れないにも理由があるんですよね。

それが教室で一緒に過ごしていると、何となく見えてくる。

創作を通しても言葉を通しても見えてくるところがあるので、それを頑張らせるよりも、「そうなんだね」と受け止める姿勢でいます。

そういった理解はやはり安心感に繋がると思いますし、自分が受容された気持ちが次のステップに繋がると思っています。

こちらから「しよう、しよう」ではなくて、子供たちがありのままに教室で過ごせることを意識してます。

やってもいいし、やらなくてもいい。

それでもあなたはここに居ていい。

そういうスタンスをとるようにしています。

子どもたち一人ひとりの個性が輝く教室の風景

ー 子どもさんの自発的な創作を大切にされていらっしゃるということですが、そういった空間で過ごすお子さん達の様子はどんな感じですか?

林さん:自分のしたいことがあって迷いなくどんどん進めていけるお子さんは、このアトリエをまさに自分のアトリエのように使っています。

自分に合う画材、自分の持っている専門性をぐいぐい伸ばしている様子が見られます。

一方で、自分からしたい事はないけれど、お友達の創作見てるのが楽しいとか、人とのコミュニケーションを楽しんでいるお子さんもいます。

ここでおしゃべりをしたり、いろんなものを見たりという中で心が元気になっていく。

そうすると、自分から何かが進められたりもするので、そういう過程をていねいに見ていけたらと思います。

ここに来たらやっても良いし、やらなくても良い。

それが許されてるんだなっていうのは子どもたちにも何となく感じてもらえてると思います。

何かを作っていく子もいれば、触感遊びと言って、混ぜたり捏ねたりして、五感を沢山使って満足する様子もあります。

アトリエを終えるとどの子もすっきりした表情で帰宅される印象がありますが、それは自分の心に正直に過ごせた証だと思います。

それぞれの理由で教室を選ぶ親子たち

ー 保護者の方はお子さんにこの教室でどんな経験をしてほしいと考えていらっしゃいますか?

林さん:「自由にのびのびと過ごしてほしい」という方が多いと思います。

子どもたちは図工が好きだから来る、自由だから来るなど、そういうお子さんが多いかなと思います。

アート療法という分野を知ってというよりは、純粋に楽しそうだから通ってみたいという方が多いです。

お子さんの中にはステップアップしていく環境に対して拒絶反応してる場合もあり、この教室を体験してから「ここならやってみたい」と言ってくださるケースもあります。

活動の幅を広げていきたい今後のビジョン

ー 今後強化したいとお考えのことであったり、将来的なビジョンについてお伺いできますか?

林さん:常に意識しているのは素材選びで、“この素材、こんな風に使ったら面白いかも”など、日頃からアンテナをはっています。

そして、今は週に1回の教室ですが、出張アトリエなどもっと活動を広げ、子どもたちと出会い、表現することの楽しさ、心地良さを伝えたいです。

アート療法がもっと身近なものになるといいなと思っています。

興味を持った方へのメッセージ

ー 興味を持たれた方にメッセージをお願いできますでしょうか?

林さん:画材には色んなものを引き出してくれる要素があり、それをまず子供たちがどんな風に受け入れるかという姿を、是非親御さんには見てもらいたいです

本当に色を使うって楽しいんだねとか、粘土1つでもこの触感がたまらないと言っているお子さんの顔を見ていただきたいので、興味があれば体験にお越しください。

アート療法には作品を上手下手ではなく別の目線で見る見方があるので、観賞力を養うことができると思います。作品を見る親御さんの目線も徐々に変わってくるのではと思います。

そういったことを視覚的に分かるようにチャートにまとめてお渡ししていますので、親御さんにとってもお子さんを色々な方面から見るきっかけになるのではないかなと感じています。